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「ティンバーランド」とクリストファー・レイバーンが目指すサステナブルでギルトフリーな未来

Sep 25, 2019.高村 学Shanghai,CN
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「ティンバーランド」のグローバル・クリエイティブ・ディレクターのクリストファー・レイバーン

「ティンバーランド(Timberland)」は、米国ニューイングランドの豊かな自然環境のなかで生まれた世界的なアウトドアライフスタイルブランドだ。ちょうどポートランドとボストンの中間地点であるニューハンプシャー州ストラザムの、緑豊かな“森の中”に本社を構える。シグネチャーアイテムとして世界的に知られる「イエローブーツ」も、元々はニューイングランドの厳しくも豊かな自然の中で働く人々のためにデザインされたブーツだ。「ティンバーランド」のものづくりに対する理念や哲学、そしてサステナビリティや自然環境保護に対する信念は、発祥の地であるニューイングランドの森に根差している。

「ティンバーランド」の自然環境保護に対する活動は多岐にわたるが、特に長年注力しているのが植樹だ。2001年から世界中で行ってきた植樹は1,000万本を越え、今後5年間でさらに5,000万本を植樹する。「ティンバーランド」は世界的な植樹活動団体とも連携し、その活動を支援している。アフリカでは、大陸を横断する8,000kmの植林帯を育てるという「緑の長城(Great Green Wall)」プロジェクトを支援している。森林を再生する緑化活動は、“森”がルーツのひとつでもある「ティンバーランド」ならではの姿勢だ。

こうしたエココンシャスなブランド・フィロソフィーとデザインを引き継ぐのが、2018年10月にグローバル・クリエイティブ・ディレクターに就任したクリストファー・レイバーン(Christopher Raeburn)だ。彼もまた「REMADE(リメイク)」という理念を持ち、環境や社会への責任ある行動をブランドの公約として掲げるパイオニア的存在として知られている。今年9月6日、上海の複合商業施設「興業太古匯(HKRI Taikoo Hui)」でグローバルキャンペーン「Nature Needs Heroes (ネイチャー・ニーズ・ヒーローズ、“自然はヒーローを求めている”) 」の発表会が開催された。クリストファー・レイバーンも登壇し、地球環境のために簡単な小さな行動を起こして、この運動に参加するように呼び掛けた。

クリストファー・レイバーンが「ティンバーランド」とともに目指すこれからの未来について、中国・上海で話しを聞いた。

SVT:「Nature Needs Heroes」について教えてください。
クリストファー・レイバーン(CR):「ティンバーランド」の環境サステナビリティに対する考えに基づき、世界で12人のエコヒーローを選び、世界各地のコミュニティに地球を守るための活力をもたらすことを目指す取り組みです。自分自身が取り組める事について、例えばどんな小さな変化からでも環境改善に繋がるのだという事にみなさんも気付くべきだと思います。例えば、ゴミの分別やリサイクル、生活環境の緑化、地球への悪影響を出来るだけ削減する、といったほんの小さな事を毎日全員ですれば、この社会をよりよくする事は必ずできます。

SVT:「ティンバーランド」のクリエイティブ・ディレクターとして「サステナビリティ」に取り組む際に、直面している課題は何ですか。
CR:実は課題というより今までにないチャンスだと感じているのです。今はさまざまなリサイクル素材が使えるし、環境に配慮したいろいろな生地を取り入れることもできる。「ティンバーランド」は社会的責任も、それを実現する力も持ち併せているブランドです。そんなブランドと一緒なら、もっとエコ商品を作って、もっと社会貢献ができると考えているのです。だから、課題というより、チャンスだと感じています。

SVT:「サステナビリティ」は業界全体が考えるべき重要な課題です。あなたが業界のリーダーシップをとっていく考えはありますか?そして、「サステナビリティ」に力を入れている他社とこの分野で一緒に活動されることは考えていますか。
CR:ファッション業界のCo2排出量は、全体の約8%を占めており、自動車業界に次いで2番目に多い。今こういう機会を頂いているからこそ、私はサステナビリティに関して業界におけるパイオニアのポジションを取りたいと考えています。パイオニアのポジションをとるために必要と考えているのが、コラボレーションです。自分のような小さな会社であっても、ビッグブランドとコラボすることで、今までにない多くの優秀なパートナーシップが築ける。パートナーは、競合他社等よりも、ソーシングやサプライチェーンにおける製造メーカー、ラバー製造メーカーなど、一緒にファッションをイノベーションできるところと連携していきたいし、その中でいろんな事を学んでいきたい。

SVT:デザイナーは、アーカイブ含め過去から学ぶことが多いと思いますが、「サステナビリティ」に関して過去から学ぶことはありますか?
CR:子供の時から親にずっと言われ続けたのは、「物を作って(MADE)、使って(DO)、修理する(AMEND)」という、物を大切にする考え方。つまり、前提として、物は修理(AMEND)して使うべきなのです。それは、日本の歴史上でゴミのなかった時代と言われている、400年前の江戸時代におけるリサイクルに似ていると思います。この事は常識に近いと思いますし、みんながその常識に気付いたら、すごく大きな変化になると思います。私はこれからの未来に対して、とてもポジティブに考えています。なぜなら、今は行動を起こす時期であり、イノベーションを起こすテクノロジーもある。今何かを変えなければならないと気付けば、すべては繋がっていくのです。

ファーフリー(動物の毛皮を使用しない)、クルエルティフリー(動物実験を行わない)など、持続可能性や社会的責任に対する消費者の意識は年々高まっている。「ティンバーランド」は、自社の活動に関して明確なビジョンと数値目標を持ち、成果を数字とともに公表している。例えば、過去4年間でリサイクルしたペットボトルの本数は1億2800万本を越え、ROR(リサイクルオーガニック・再生可能)素材の少なくとも1種類を含むフットウェアの割合は69%に達している。“グリーン・ウォッシュ(見せかけの環境配慮)”とは明らかに一線を画している。「ティンバーランド」が目指す未来は、サステナビリティに関して一切妥協せずに商品開発を行い、地球環境に負荷のかからない、“ギルトフリー(罪悪感のない)”なプロダクトを提供することなのだ。“森”から誕生した「ティンバーランド」が、森林環境へ貢献する、この循環もまさにサステナブルだ。「ティンバーランド」がクリストファー・レイバーンとともに目指すグリーンな未来が見えた気がする。

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