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「アンフィルター」の美しさ 藤井萩花が9年ぶりの写真集『OIL』で表現した「女性の強さ」

NEWOct 27, 2026.高村 学Tokyo, JP
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写真集『OIL』より

元E-girls、Flowerのメンバーとして一時代を築き、現在はアパレルブランド「ロールモデル(ROLE MODEL)」、アイウェアブランド「エル マリアッチ(EL MARIACHI )」、キッズ・ベビーブランド「ナチュラル ボーン(NATURAL BORN)」のディレクションや、クリエイティブな発信を続ける藤井萩花が、約9年ぶりとなる写真集『OIL』を11月6日に刊行する。タッグを組んだのは、バイカーカルチャーやストリートの最前線を硬質なモノクロームで撮り続けてきた長濱治だ。長濱治が過去に撮影した女優・梶芽衣子の写真集に深く感銘を受け、自ら「女性の強さを表現したい」とアプローチしたことで実現したという本作。11月1日には「代官山 蔦屋書店」での出版記念イベントも控える中、ふたりの息子の母となり、表現者としてもライフステージを劇的に変化させた彼女が、作品に込めた覚悟と現在の人生観を語った。

『OIL』というタイトルは、デザイナーの鬼丸トシヒロから提案された「Origin(起源)」「Identity(個性)」「Loop(循環)」の頭文字に由来する。「今回のタイトルを長濱さんの事務所で考えている時にアイデアをいただいたのですが、私の人生のタイミングにぴったりと合う3つの言葉が揃いました。今まで生きてきた中での『アイデンティティ』や『オリジナリティ』、そして昔の時代の格好よさや独自性が回って今また格好よく見えるという『ループ』の感覚。私自身、昔の映画やカルチャーが大好きで長濱さんの作品に惹かれていたこともあって、自分の人生観にぴったりなタイトルになりました」と、タイトルの由来について話す。バイクのエンジンオイルやガソリンの匂い、金属感、そして肌から滲み出る汗や脂といった生々しい質感がひとつの言葉のもとに凝縮されている。

今回のセッションにおいて、藤井萩花が何より重視したのは長濱治の世界観に完全に浸ることだった。「私は長濱さんの世界観に入りたかったというのがすごく大きいので、自分のアイデアというより長濱さんが撮りたい私というのを尊重しました。初日の撮影は私と長濱さんですごく気持ちよく撮影ができました。今までは与えられたものをそのまま吸収して表現することが多かったのですが、今回は表現者として、作り手としてスタッフと一緒に作り上げていくことができ、自分が表現したかったことを実現することができました」。スタイリストの服部昌孝やヘアメイク、そして撮影前後に誰とでもフラットに言葉を交わす長濱治との濃密なコミュニケーションによって、現場の空気はひとつになった。「この写真集で何を伝えたいか一言では言えないですし、見た人がそれぞれに何かを感じてくれたら」と振り返る。

作品の大きな特徴となっているのが「アンフィルター=加工していない自己表現」だ。妊娠線までも包み隠さずリアルに表現した。「花に縁がある人生なので」と語る彼女のウエストに刻まれた桔梗と蘭の花——それは、ふたりの息子の母となった藤井萩花の「母としての覚悟」と「女性の強さ」を静かに表徴しているようで、見る者に強い印象を残す。

1回目の撮影では、大好きなニーナ・シモンの曲を流しながら撮影に没頭。2回目の撮影は、旧車の修理工場で鉄や泥にまみれ、3回目となるスタジオ撮影では、体あたりで撮影に挑んだ。「お前の好きな服を着てこい」という長濱治の意向のもと、すっぴんで髪もセットせず、私服のままカメラの前に立った。「YouTubeでも『髪の毛ボサボサやで』と家族に言われますが(笑)、普段のリアルを見せないと意味がない。いろいろな格好よさや美しさがある中で、結婚、出産、離婚といろいろな経験をして、結局私が好きな原点はこういうことだったんだと再確認できました。人生において大切な一冊になりました」と語る。

出来上がった写真集を手に取ってみると、自分は「太陽より月が好きなんだ」と改めて実感したという。楽曲でも映画でも、ハッピーエンドより、自分の感覚の深部に刺さるものを好む。音楽もどこか翳りのあるものを愛する。晴れているほうが過ごしやすいが、雨の日の空気感を愛する。藤井萩花はそれを太陽と月の関係に重ね合わせる。かつては極度のインドア派だったと話す藤井だが、ふたりの息子の存在がその世界を大きく広げた。「映像を見たり公園の滑り台で遊んだりするよりも、海や砂、土、どんぐりで遊んでもらった方が全然いいなと感じるようになりました。日本にはこんなに綺麗な場所があったんだ、いい温泉があるんだという発見があって、ふたりには感謝しています。幼い頃、父が運転する水上バイクに引っ張られて遊んだ琵琶湖の記憶があって、そういった記憶も今の私の感性に影響しているのかもしれません」。

出産を経て柔軟性を増した現在の彼女は、シャープだった過去の自分を振り返りつつ、大人の「強さ」と「色気」のあり方を見つめ直している。「強さの中に女性らしさは絶対にあると思いますし、その女性らしさが色気になります。山口百恵さんや中森明菜さんのように、強くて格好よくて、それでいて女性らしさがあって、うわべだけで言葉を語らなかった時代の女性に憧れがあります。そういう強さを諦めたくない。『OIL』を見て、周りに流されず、自分の感覚や軸を大事にするきっかけになってくれたら嬉しいです」。等身大の自分をさらけ出し、時代を超越した「生」を刻みつけた彼女の眼差しは、どこまでもまっすぐで、凛とした静けさを湛えていた。長濱治の圧倒的なモノクロームの中で、彼女が自身のアイデンティティとどう対峙し、飾らない自我を焼き付けたのか。その美しくも濃密な瞬間は、すべて『OIL』の中に息づいている。

■『OIL』 概要
タイトル:『OIL』
著者:藤井萩花 × 長濱治
発売日:2026年11月6日(日本国内)
価格:5,500円(税込)
仕様:A4変型 / 96ページ
ブックデザイン:鬼丸トシヒロ
コラージュアートワーク:Oneill
発行:manpan press
イベント情報:11月1日に代官山 蔦屋書店にてサインイベントを開催

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