
ZOZOが運営する「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」と中森明菜によるコラボレーションが話題になっている。このプロジェクトを手掛けたのは、ZOZOのブランド営業本部 生産企画部の平岩瑞基(29)氏だ。両者の取り組みは、中森明菜が2024年にデビュー42周年を迎えたことを記念してスタートしたもので、2025年9月24日には第3弾を発表した。2024年の第1弾、第2弾では「TATTOO」や「北ウイング」「SILENT LOVE」といった楽曲のレコードジャケットやブックレットをイメージしたデザインのTシャツを制作。監修は中森明菜自身が務めた。第3弾では、「コンバース(CONVERSE)」「リー(Lee)」とのコラボアイテムを発売し、これまでと同様に中森明菜自身が監修。「コンバース」の「ALL STAR TREKWAVE HI」の限定モデル1型に加え、「リー」のデニムジャケット2型、ジーンズ2型の計5型を受注販売。各アイテムには、中森明菜の直筆サインがプリントや刺繍であしらわれている。Tシャツからデニム、スニーカーまで、すべてにおいて中森明菜の感性が反映されており、ひとつひとつのアイテムからはまるであの名曲たちが聞こえてきそうなほどだ。

■時代を超える魅力と「中森明菜」というジャンル
1982年に楽曲「スローモーション」でデビューした中森明菜。その魅力は、音楽や歌唱力だけでなく、「ひとつのジャンル」ともいえる自身の存在感にある。単なるアイドルや歌姫ではなく、「ファッションアイコン」としても高く評価されてきた。時代に流されず、自分の色を持ち、それをブレずに表現し続ける姿勢。衣装やビジュアル、ライブパフォーマンス、歌の表現まで含め、そのすべてが中森明菜という「ひとつのジャンル」であり、平岩瑞基氏はそこに着目した。「中森明菜さんは独創性が際立っており、ファッションの観点から見てもつねに格好良い存在だと感じていました。個人的な思いもあり、コラボレーションのきっかけがあれば挑戦したいという想いが、今回のプロジェクトに繋がりました」と振り返る。企画のスタートは約3年前。「まず、こちらからアプローチさせていただきました。80年代から独自の価値やブランドを築いてきた方なので、プロジェクトにはつねに緊張感が伴いましたが、中森明菜さんの時代を超える存在感を実感しました。唯一無二の存在と仕事ができることは光栄であり、心から誇りに思います」と語る。
今回のコラボレーションでは、現役として活躍する「今の中森明菜」を伝えることに重点を置いた。「単なる懐古や流行のリバイバルではなく、他にはない新しい感性としての中森明菜さんをユーザーに届けることを重視しました。古着ブームやY2Kファッションが主流の中でも、中森明菜さんは特別な存在。当時の衣装やジャケット写真を見ても、ひとつひとつに強いこだわりがあり、古臭さは全くなく、むしろ現代だからこそ新しく、センセーショナルに映ります」と語る。「もうひとつ意識したことは、ZOZOとして幅広い年代にアプローチする軸を持ちながら、まず中森明菜さんのファンのみなさまに向けたものづくりをしようということです。中森さん自身がどういうものを作りたいか、ファンのみなさまにどう着てもらいたいか、その思いを尊重することが結果的に新しいユーザーも含めて多くの人に喜ばれる方法だと考えました」と述べる。
■社内の共感とものづくりのこだわり
ディテールへのこだわりや、ファンの喜びを念頭に置いたものづくりは、チーム全体で取り組む創造的なプロセスとなっていった。プロジェクトを社内で初めて提案した際、チームは非常に前向きに受け止めたという。「ZOZOには、カルチャーとして前向きに取り組む風土があり、今回のプロジェクトも新しいチャレンジだったが、実現後の盛り上げ方も含め、部署を問わず協力してくれました」と平岩氏は語る。スタッフの多くは中森明菜世代とは異なるが、親世代の影響もあり、彼女の存在は頭に残っている。「私自身も幼い頃、母が運転する車の中で中森明菜さんの曲を聴いて育ちました。その記憶が、自然と中森明菜さんを意識するきっかけになりました。今でもテレビやネットで当時の映像を簡単に見られ、世代を超えて格好良い存在として認識されていると思います」と説明する。さらに、当時のファンの声や映像を改めて確認することで、デビュー当時の衝撃的な存在感を実感したという。
第1弾と第2弾ではTシャツを中心に企画され、カジュアルに着られるファッションアイテムとしてのプロダクトを目指した。第3弾ではデニムやスニーカーなど中森明菜の感性を反映。レディースのデニムには切りっぱなし加工を施し、メンズはシンプルに。シューズは厚底ブラックを選ぶなど、中森明菜のアイデアを採用した。「我々から提案をするのではなく、中森明菜さんのアイデアやデザインポイントをできる限り再現しました」と平岩氏。撮影時には、プロダクトを中森明菜が楽しんで着用している姿に感動したという。「ファンのみなさまが喜ぶものづくりを最優先したことで、ベストなプロダクトを作れたと思いました。そのプロダクトを中森明菜さんが初めて着用する姿を見たとき、本当に似合っていて感動しました」と振り返る。
「ゾゾヴィラ」では単に商品を販売するのではなく、体験やストーリー性を重視する。 10月には第3弾のコラボレーションを記念したポップアップ・イベントを西千葉の「ZOZOSTUDIO COFFEE」で開催。老若男女問わず、全国から駆けつけた多くの来場者で賑わった。「オンラインだけでは背景やプロセスを十分に伝えきれないこともありますが、できるだけリアルイベントや社内のアセットを活用して、プロダクトが生まれた背景を伝えることを大切にしています」と平岩氏。今回のプロジェクトは、中森明菜という唯一無二の存在の魅力を現代のファッションシーンに落とし込み、世代を超えて共感を呼ぶ試みとなった。多くのユーザーたちに中森明菜の今の存在をそのまま届けられたことが、平岩氏にとって最大の喜びであり、プロジェクトの成功を象徴している。
※コラボレーション企画はすべて終了。











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