
香港、青山へ。「クルニ(CULLNI)」が世界に向けて動き始めた。服をつくることから始まった「クルニ」が、いま、服だけではなく「場所」もつくりながら世界へ向かっている。2026年8月、香港・湾仔(ワンチャイ)に「クルニ」初の海外路面店がオープンした。翌9月には東京・南青山に「クルニ 青山」をオープン。台湾、韓国への展開も進み、東京では銀座への出店も視野に入れている。
2014年春夏シーズンにスタートした「クルニ」は、今年で12年目を迎える。素材、カッティング、仕立てにこだわり、ドレスウェアの端正さとカジュアルな要素を組み合わせながら、クリーンでエレガントな服をつくってきた。その「クルニ」が、いま海外へ出ていく。なぜ、いまなのか。そして、海外へ出てもなお、なぜ「日本でつくること」にこだわるのか。デザイナーの安藤一彦に、その理由を聞いた。
■ 香港から始まった、世界への一歩
最初の大きな転機となったのは、2025年11月に香港で開催したポップアップ・ストアだった。「ポップアップの開催をInstagramで告知した段階から反応があり、実際の会場にも多くの方が足を運んでくださいました。香港でクルニを知ってくださっている方が想像以上に多く、確かな手応えを感じました」。香港での反応を実際に目にしたことで、海外で「クルニ」を伝えていくことが現実味を帯びていった。
そして、ポップアップからわずか数カ月後の2026年8月28日、香港・湾仔のセント・フランシス・ヤードに「クルニ」初の海外路面店がオープンした。「ポップアップを通して、香港の方にクルニの服や考え方を直接感じていただけたことが大きかったです。これからも香港で、クルニの価値を丁寧に伝えて、広げていきたいと思いました」。一度きりのイベントではなく、「クルニ」を知ってもらうための場所を香港につくる。それが、海外への最初の一歩になった。
■ なぜ、次の場所に青山を選んだのか
香港での出店に続き、9月12日には東京・南青山に「クルニ 青山」をオープンした。海外へ向かう一方で、東京にも新たな店をつくる。その場所として選んだのが青山だった。「青山は、世界をつなぐ街だと感じています。日本を代表するブランドが集まり、国内外から多くの人が訪れる街。そこに店を構えることは、世界に向けてクルニを知ってもらう上でも大事なことだと思っています」。
中目黒のフラッグシップストアに続く、東京の新たな拠点。海外から東京を訪れる人にも「クルニ」を知ってもらえる場所として、青山を選んだ。「クルニ 青山」は、白を基調とした静かな空間だ。そして、この空間もデザイナーの安藤一彦がデザインしている。服だけではない。ソファや什器、照明など、店そのものまで安藤がデザインすることで、「クルニ」の世界を一つの空間としてつくり上げている。
「新しい街で、これまでクルニを知らなかった方に服を見てもらえることはもちろん、これまでクルニを知ってくださっている方にも、より深くクルニの価値を感じていただける空間になっていると思います」。「クルニ」にとって店は、商品を販売するだけの場所ではない。服を実際に見て、触れて、着る。そして、その背景にある「クルニ」の考え方を感じてもらう。そのための場所でもある。
■ 服をつくる。その先にあるもの
「クルニ」の服は、ドレスウェアの端正さをベースにしながら、切り替えやアシンメトリー、異素材の組み合わせなどによって個性を加えている。日常で着られることを前提にしながら、どこか印象に残る。それが12年間、「クルニ」が追求してきた服づくりだ。「クルニは、自分自身がデザインし、つくることを大切にしてきたブランドです。これからも、関わる人たちとクルニの価値観を共有しながら、一つひとつ丁寧につくっていきたいと思っています」。
安藤がデザインするのは服だけではない。店舗の空間も、自ら手掛ける。その根底にあるのは、「クルニ」というブランドを自分自身の感覚でつくり続けるという姿勢だ。そして、その考え方は生産背景にもつながっている。「クルニ」の商品は、コラボレーションを除いてすべてメイドインジャパンだ。
■ なぜ、日本でつくり続けるのか
海外へ展開していくブランドでありながら、日本でつくることには明確な理由がある。「日本には、長年培われてきた技術や、ものづくりに向き合う職人さんたちがいます。クルニも、そうした人たちと顔を合わせながら、一緒に服をつくってきました。そこにある技術や、人とのつながりも含めて、クルニの価値だと思っています」。
「クルニ」にとって、メイドインジャパンは単なる生産地の表示ではない。誰がつくっているのかを知り、その人たちと向き合いながら服をつくる。そこまでを含めて、「クルニ」のものづくりだと考えている。だからこそ、海外へ出ていく今も、その部分を変えるつもりはない。「日本から世界に出ていくのであれば、日本でつくったもの、自分たちが顔を合わせて知っている人たちがつくったものを、世界に届けていきたい」。
日本のものづくりを取り巻く環境は変化している。担い手が減れば、技術や仕事そのものが失われていく可能性もある。安藤には、「クルニ」を通して日本のものづくりを次につなげていきたいという思いがある。「やらなければ、なくなっていくものもあると思います。日本で生まれた技術や、人とのつながりを大切にしながら、それをクルニの価値として世界に届けていきたい。自分が住んでいる日本が豊かになってほしいという思いもあります」。
世界へ向かうことと、日本でつくり続けること。「クルニ」にとって、その二つは別のものではない。日本で培ってきたものを、そのまま世界へ持っていく。それが安藤の考える「クルニ」のこれからだ。
■ 台湾、韓国、そしてその先へ
香港、青山に続き、「クルニ」は次の都市へ向かう。台湾ではポップアップ・ストアを予定し、韓国でも2027年の展開に向けて準備を進めている。東京では銀座への展開も視野に入れている。「来年も新たな出店を考えています。現実的には2店舗、もしくは3店舗です」。ただ、店舗数を増やすこと自体が目的ではない。
国や都市が変われば、「クルニ」の服に対する反応も変わる。その違いを実際に感じながら、一つずつ市場を広げていく。「クルニは地に足を付けて、しっかりやっていきたい。体型やサイズが近いアジアで、まずしっかり伝えていく。それが世界に対する第一歩だと思っています」。
東京、香港、台湾、韓国。それぞれの都市で「クルニ」を知ってもらい、実際に服を手に取ってもらう。その積み重ねの先に、さらにその先の都市がある。「日本だけでなく世界でクルニを知ってもらい、世界のさまざまな都市でクルニを手に取ってもらえるブランドにしていきたい」。2014年に日本で始まった「クルニ」は、12年をかけてここまで来た。
これから向かうのは、まだ見たことのない場所だ。けれど、持っていくものは変わらない。日本で創ったものを、世界へ。「クルニ」は今、日本で積み重ねてきたものを携えて、世界へ向けて動き始めている。













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