
アイアイコンバインド新社屋(撮影:カネダ アキラ)
2026年3月上旬、韓国・ソウルを約1年振りに訪れた。アジアでも屈指の都市であるソウルは、雑然とした一角も多く残り、再開発エリアの洗練された景観と、古くからの商店街や未舗装の道が混在する街並みは、この都市特有のものに映る。そして、その新旧が混在する感覚は、街並みだけでなく、韓国ファッションのあり方にも色濃く反映されているようだ。
BIGBANGの活動再開の話題もあるK-POPの後押しから、韓国ファッションへの関心は依然として強い。ストリートブランド「ディスイズネバーザット(thisisneverthat)」やテックウェア・ブランドの「サンサンギア(SAN SAN GEAR)」などは、日本市場でも着実に進出している。こうしたブランドの進出は、韓国ファッションが単なるトレンドから一定の市場規模と支持基盤を築いて来ていることを示している。
一方で、ここ数年の急速な広がりを受け、「韓国ファッションは、すでにピークアウトしているのではないか」という声もチラホラ聞かれる。しかし、今回現地を訪れて感じたのは、それとは全く異なる実感である。韓国ファッションはブームとしての過熱感こそ落ち着きつつあるものの、しっかりと着実に発信している。
日本だけでなく、韓国ファッションはすでにアジア圏において一つのスタンダードとして、「K-fashion」という市場カテゴリーが成立している。今後、タイやシンガポールといった新興ブランド群が台頭する可能性はあるものの、韓国ファッションの存在感が急速に後退するとは考えにくい。
その韓国ファッションのイメージを象徴している分かりやすいブランドのひとつとして、「ジェントルモンスター(Gentle Monster)」がある。「ジェントルモンスター」は、単なるアイウェアブランドではなく、エンターテインメント性を内包した体験型ブランドとして捉えることが出来る。
店舗に入ると、まるでディズニーランドのようなアミューズメント施設に近い感覚さえ覚える。接客も一般的な販売員というより、来店者を非日常空間へ導くキャストのような役割を担っている。店舗は商品を購入する場であると同時に、ブランドの世界観に参加する場でもある。アイウェアを身に着ける行為は、その体験へ没入するためのプロセスとも言える。そうして得た体験の余韻を持ち帰るためのプロダクトが、同ブランドにおけるアイウェアなのかもしれない。
こうしたアイウェアの存在感の高まりの背景には、ラグジュアリーブランドの価格高騰がある。近年、レザーバッグをはじめとする主力アイテムの価格は大きく上昇し、多くの消費者にとって手の届きにくい存在となってしまっている。その代替、あるいは新たな表現手段として、比較的現実的な価格帯で個性を打ち出せるアイウェアが注目されている。日本国内においてもアイウェア市場は拡大傾向にあり、夏の長期化も相まって、この流れは今後さらに強まると見られる。
少し視点を広げると、ラグジュアリーブランドのエントリー商品としてフレグランスがここ最近売れている。着飾れるアイテムが少ない夏に、身に付けられるアクセサリーとしても捉えられる商品として、今後さらに注目が高まると考えられる。「ジェントルモンスター」を展開するアイアイコンバインド(IICOMBINED)社も急成長を遂げており、その業績は韓国発ブランドの競争力の高さを裏付けている。
アイアイコンバインド社の新社屋もまた、ブランドの思想を体現するかのような建築だった。特徴的なのは、インパクトの強さをプロダクトそのものに過度に求めるのではなく、建築や什器、空間演出といった編集領域で最大化している点である。プロダクト自体はあくまで着用可能な現実的ラインに収めることで、市場性と独自性の両立を図っている。

韓国ファッションを表現するなら、ヨーロピアンモードやアメカジといった分かりやすいベースを踏まえつつ、韓国市場特有のスピード感とエンタメ性を掛け合わせたスタイルと言えるかもしれない。さらに商品単体の強さだけでなく、どのように提示するかまで含めてデザインされている点に、韓国ブランド特有の編集力を感じた。
最後に、気候の変化にも触れておきたい。今回訪れた3月上旬のソウルは、朝晩こそ冷え込むものの、日中はアウターを必要としないほど温暖だった。韓国でも夏の長期化が進んでおり、シーズン構造は確実に変化している。その影響は商品構成にも及び、今後は衣料よりもアクセサリーや雑貨といった軽装アイテムの重要性がさらに高まっていく可能性が高い。
ファッションの主役が、重厚なアイテムから軽やかなアイテムへと移行していく流れは世界的にも見られる傾向であり、表現の重心がウェアから雑貨へと広がっていく点は非常に興味深い。

























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