
J.フロント リテイリングにアクティビストの3Dインベストメント・パートナーズが参戦した。保有比率は6月19日付で5.01%、株価は一気に3,000円近辺まで駆け上がった。その後、6月29日の取引終了後に関東財務局へ提出された変更報告書で7.55%へ引き上げられたことが判明している。
市場は「不動産価値の見直し」「株主還元強化」と見ているが、巳之助は今回のアクティビスト参戦をきっかけに、百貨店からの本業スライドというもっと大きな変化を予想している。J.フロント リテイリングは百貨店から街づくり企業へスライドし始めている。もはや百貨店が売場を貸すだけの商売は、終焉を迎える序章に入ったように感じる。
そして今回、その土地や街の価値を誰よりも気にするアクティビストが株主として現れた。旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンスと、投資家の野村絢氏らによる髙島屋の株式の買い増し時のように、「資産をもっと活用しろ」という話だけで終わるのだろうか。
J.フロント リテイリングは、百貨店から何業にスライドするのか。巳之助が気になっているのはそこだ。最近の同社の商売を、まず足元の数字を見てみよう。2026年2月期の事業利益は、百貨店事業の309億円に対し、非百貨店事業は222億円を稼ぐ。2027年2月期の計画では、非百貨店事業の中でデベロッパー事業が、73億円から109億円へ大幅伸長の見込んでいる。利益の源泉は、百貨店売上からエリア価値へ移り始めているように見える。
3Dインベストメント・パートナーズは、不動産価値や資本効率を重視することで知られる。だから市場では、「追加の自社株買い要求ではないか」「保有資産の価値をもっと出せと言うのではないか」という見方が多い。J.フロント リテイリングは、単なる土地持ち企業ではない。不動産価値を重視する3Dインベストメント・パートナーズが求めるのは、単なる「資産売却」や自社株買いではなく、「この資産を使ってもっと大きな商売を作れ」ということではないか。6月11日に名古屋・栄にオープンした商業施設「ハエラ(HAERA)」、IP事業、街づくりなど、J.フロント リテイリングには、まだ伸ばせる余地が残っている。
J.フロント リテイリングは何業になるのだろう。不動産会社だろうか。巳之助は、それも違うと思う。三井不動産のような大規模再開発とは根本的に違う。J.フロント リテイリングは、百貨店、PARCO、外商、IP事業で培った「熱狂的なコンテンツ力」を武器に、百貨店を材料として「都市コンテンツ開発プラットフォーム企業」へ本気でシフトしようとしている。建物は真似できるが、熱狂は真似できない。街の価値を決めるのは、最終的に中身(コンテンツ)だ。
髙島屋が百貨店を強くし、三越伊勢丹が富裕層を深掘りするなら、J.フロント リテイリングは都市にどんなコンテンツを並べれば、その街の価値が上がるのかを考え始めているように見える。「都市コンテンツ開発プラットフォーム企業」へ変身しようとしているのかもしれない。百貨店を卒業するのではない。百貨店を材料にして、次の商売を作ろうとしているのだ。
「ハエラ」や心斎橋構想の進捗を見てからが本番だ。変身が本物なら評価軸が変わる。ただし現実には、利益の中心はまだ百貨店事業だ。改装費や人件費の影響も受けやすく、完全な「いち抜け」には時間がかかる。また、3Dインベストメント・パートナーズとの対話が「資産を売る」方向へ進むのか、「資産を使って商売を広げる」方向へ進むのかも重要だ。今は飛び乗る局面ではなく、変身の進捗を見る局面だろう。
プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。












![[[name]]](/assets/img/common/sp.png)