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「テレビ局に不動産はいらない」フジ・メディアHDにサンケイビル分離を迫るアクティビストの思惑【いづも巳之助の一株コラム】

NEWOct 22, 2025.いづも巳之助Tokyo, JP
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10月20日、アクティビストの米ダルトン・インベストメンツがフジ・メディアHDに再び書簡を送り、不動産事業のスピンオフ(分離)を求めた。同時期に制作費の削減も進められており、内外から改革の波を受けている。

フジが9月末に発表した「改革アクションプラン」では、ROE8%、営業利益750億円を目標に掲げたが、達成年限が明示されていないと指摘。さらに「不動産事業がメディア本体の資本効率を阻害している」として、サンケイビルの早期分離を要求した。フジHDは政策保有株の削減や自己株買い拡大で応じているが、構造改革の中核はまだ手つかずのままだ。

■不動産事業があるとROEが上がらない
ダルトンは関連会社を含め、フジ・メディアHD株を約7.5%保有する筆頭級株主。同社はROE(自己資本利益率)8%を目指す経営方針に賛同しつつも、「その前提条件が甘い」と見ている。最大の理由が、不動産事業(サンケイビル)の「存在」だ。

ROEは「当期純利益÷自己資本」で計算される。不動産事業は巨額の資産を抱えるため、分母である自己資本を押し上げる。利益率が同程度でも、資本が大きくなればROEは下がる構造だ。たとえば、放送事業が自己資本1000億円で利益100億円(ROE10%)でも、不動産事業が3000億円の資本で150億円の利益(ROE5%)を稼げば、全体ではROE6.25%にまで薄まってしまう。これがダルトンの言う「資本効率を食う不動産の存在」なんだ。

■その提案は「ソニー方式」に近い
ダルトンの主張は決して突飛ではない。かつてソニーも、金融子会社のソニーフィナンシャルを上場分離し、「エンタメとテクノロジー」を中心に据えた本体と、「金融」という安定事業を切り離した。その結果、グループ全体のROEが上がり、株価もPBR1倍を回復した。

同様にフジHDも、放送・コンテンツと不動産を分けることで、それぞれの事業価値を「見える化」できる。サンケイビルが独立すれば、投資家は安定収益を評価し、本体はIPコンテンツ開発や配信戦略に集中できるというわけだ。

■一方で、内部では制作費1000万円削減の現実
外では不動産売却を迫られ、内では番組制作費が削られている。「デイリー新潮」の報道によれば、フジテレビはプライム帯ドラマ1本あたりの制作費を2500万円から約2000万円へ削減。バラエティ番組も1時間あたり1500万円水準から引き下げを検討している。

この「節約モード」は、広告収入の鈍化だけでなく、アクティビストが求めるROE改善プレッシャーの裏返しとも言える。しかも、フジHDの平均年収は1621万円(2024年6月期 有価証券報告書)。高いねー。業界最高水準の給与構造の中で、制作現場がコストを絞るという矛盾が生じているんだ。ダルトンが直接「給与を下げろ」とは言わない。だが「収益性の低い事業や部門の整理・再編」と繰り返す表現の裏には、この高コスト体質への静かな要請が含まれているはずだ。

■投資判断は?
株価は10月21日終値で3,300円(+1.41%)。市場は「スピンオフ期待」と「自己株買い思惑」を織り込み始めた。政策保有株売却と自己株取得2500億円計画は確かに株主還元だが、本丸の不動産再編が進まなければROE8%は絵に描いた餅だ。

旧村上ファンド系も同様の主張を続けており、「ダルトン連合」はフジHDを内外から包囲している。この冬の中間決算で、サンケイビルの扱いに一歩でも踏み込めるか。そこが次の株価ハードルになるだろう。保守的に見て、巳之助だったら株価2,800円~3,200円あたりを狙うかなあ。まだ見極めが必要だが。

巳之助は「サンケイビルを切る」か「番組を育てる」かで少し迷うけど。

プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。

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