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リカバリーウェアは「寝るとき」から「働くとき」へ ワークマンの開発担当・川田真之輔氏が「リカバリースーツ」で狙う新市場とは

NEWSep 10, 2026.高村 学Tokyo, JP
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ワークマンの川田真之輔氏(撮影:SEVENTIE TWO)

ワークマンは9月10日、リカバリーウェア「メディヒール(MEDIHEAL®)」の新商品として、リカバリースーツを発売する。9月8日に開催した2026年秋冬新製品発表会では、「メディヒール」のラインアップを新たに37品目追加することも発表。年間3400万着を供給できる生産・物流体制を整えるなど、快進撃を続けるリカバリーウェア市場でさらなるシェア拡大を狙う。

その中でも異色なのが、今回のリカバリースーツだ。これまでリカバリーウェアといえば、睡眠時や自宅でリラックスして過ごす際に着るルームウェアというイメージが強かった。そこにワークマンはスーツを持ち込み、「仕事をしながら疲れを溜めない」という新たな着用シーンを提案する。

「世の中にない市場をずっと考えていた」、そう話すのはリカバリースーツの開発を担当したワークマンの川田真之輔マネージャーだ。川田氏は、ワークマンでもっとも売れているパンツの一つであるクライミングパンツの企画も担当する。これまでデータ分析と市場調査を重ねながら商品を開発し、ヒット商品を生み出してきた。

今回のリカバリースーツも、思いつきから生まれた商品ではない。企画が動き始めたのは2025年9月ごろの、ちょうど「メディヒール」に火がつき始めたタイミングだった。「そのころに、なにか横展開ができないかと考えました。もし、横展開ができたなら、世の中にないものを作れる。自分たちで新たな市場を作っていかなくてはいけない。そうでないと、そのうち飽きられてしまうと思いました」。

リカバリーウェア市場が急速に拡大する一方で、川田氏が感じていたのは、商品そのものが「家の中で着る服」に限定されていることへの違和感だった。「リカバリーウェアというと、どうしてもルームウェアというイメージがあります。家の中でしか着ない。でも、それだけでは市場は伸びない。自分たちで着用シーンを広げていく必要があると思いました」

そこで考えたのが、外で着るリカバリーウェアだった。「外で着る人はどういう人なのかと考えたときに、誰でも着るスーツが思い浮かびました。ワークマンなので、ワーカーの方に向けて出すことが、着用シーンを拡大する方法だと思ったんです」と、当時を振り返る。

■「スーツを着て働く人もワーカー」
ワークマンが得意としてきたのは、作業現場で働く人に向けたワークウェアだ。しかし川田氏は、「ワーカー」という言葉をもっと広く捉えている。「今までワークマンは作業現場で働くワーカーさんが中心でした。スーツを出しても、買われていくのはやはりそういったワーカーさんが多かった。でも、僕たちからしたら、スーツを着て働いている人もワーカーなんです」。「ワークマンカラーズ」の展開が始まったことで、一般消費者にも顧客層は広がっている。そこからさらにスーツを着て働く人まで取り込むことで、「ワークマン」というブランドの顧客層そのものを広げる狙いがある。

一方で、スーツ市場そのものは決して追い風が吹いているわけではない。コロナ禍による在宅勤務の普及で、従来型のビジネススーツ市場は大きく縮小した。しかし、川田氏がデータを分析すると、別の動きが見えてきた。「カチッとしたスーツは苦戦しています。でも、カチッとせず、ゆるく、カジュアルに着られるものは少しずつ増えている。ワイシャツは着ないけれど、Tシャツに軽くジャケットを羽織るという方も増えてきました」と説明し、ワークマンではコロナ禍以降もスーツの販売が伸びていたという。

「コロナ前はスーツが売れていました。コロナになって在宅ワークになると、一気にスーツ市場が下がった。でも、コロナが明けつつあっても低調のままだった中で、ワークマンではスーツがずっと伸びていました」。そこには、生活スタイルの変化だけでなく、体型の変化による買い替え需要などもあったと分析する。こうした市場の変化を捉え、今回のリカバリースーツは、従来のビジネススーツとは異なる「リラックスタイプ」に仕上げた。「本気のビジネススーツは次を狙っていきます。今回はあえてゆったりとしたリラックスタイプにしました。在宅で使う場合、あまりピタッとしていると突っ張る。出張でも、自転車に乗るときでも、リラックスして着られるものにしたかった」と話す。実際、「メディヒール」のアンバサダーを務める武井壮氏からも「動きやすい」と評価されているという。

■リカバリーウェアを「外で着る」ための工夫
開発にあたって大きな課題となったのが、リカバリーウェアとしての機能と、スーツとしてのデザインをどう両立させるかだった。リカバリーウェアには「肌に直接着なければ効果がない」という先入観もある。川田氏は実証実験を重ね、インナーの上から着用した場合でも同等の結果が得られることを確認した。これによって、スーツという新しいカテゴリーへの展開が可能になった。

さらにスーツの場合、ジャケットだけでは身体全体を覆うことができない。その問題を解決するために採用したのが「フェイクレイヤードシステム」だ。ジャケットの内側にファスナーで閉じる構造を設け、胸元まで身体を包み込むようにした。「スーツだと全身を覆うことがどうしてもできない。そこで、ジャケットの内側にフェイクレイヤードシステムを付けました。ファスナーを閉めることで胸元まで包むことができます」。寒い時期になると、スーツの下に着用するダウンベストのような印象で、「何度もやり直しましたが、デザイン面にも優れて、機能性も優れたものになったと思います」と話す。

袖と裾にはボタンを付け、作業時などに生地がばたつくことを防止。ワークマンの顧客から「ピタッとしたものを好む」という声が多いことも踏まえ、スーツにもその要素を取り入れた。単にリカバリー機能をスーツに付加したのではなく、ワークマンがこれまで培ってきたワークウェアのノウハウも組み合わせている。

■「50万点でいきたい」
川田氏が今回の商品の可能性を強く感じていることは、生産数量にも表れている。アパレル業界では10万点売れれば大ヒットといわれる中、今回のリカバリースーツとワークウェアを合わせて50万点を生産する。「50万枚でいきたいと私が言いました。生産体制も問題ないです。9月と10月で50万枚を収めることができます」。

大量生産によって価格を抑えることも、ワークマンならではの戦略だ。布帛の生地を使ったスーツは、一般的にカットソー製品よりも価格が上がりやすい。そこでワークマンは大量生産によるスケールメリットを生かし、手に取りやすい価格を実現した。「市場との価格差を見たときに、市場では半値以下。そういうところで今回は勝負しています」。価格は「メディヒール」のリカバリースーツジャケットが4,990円、リカバリースラックスが3,990円。カラーはブラックで展開する。

作業着からカジュアルウェアへ。そして、リカバリーウェアからスーツへ。ワークマンが広げようとしているのは、単に商品カテゴリーではない。「働く人」という言葉の定義そのものなのかもしれない。2025年に火がついた「メディヒール」は、2026年には年間3400万着規模の供給体制へと拡大する。川田氏が今回仕掛けたのは、「寝るときに着るリカバリーウェア」から「働きながら着るリカバリーウェア」への転換だ。

リカバリーウェアという新しい市場が急拡大する中で、ワークマンはその市場を奪い合うだけではなく、自ら着用シーンを増やし、新しい需要を生み出そうとしている。「メディヒール」のリカバリースーツは、その象徴となる商品だ。9月10日の発売を皮切りに、ワークマンが狙う「世の中にない市場」がどこまで広がるのか、注目される。

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