
猛暑対応の「空調服」や高機能ウェアで市場を拡大してきたワークマンが、今度は疲労軽減をうたうリカバリーウェア市場に参入する。これまでは作業者向けを中心に展開していたが、2025年秋冬シーズンから一般層をターゲットに拡大し、本格的に市場競争へ挑む。
同社が打ち出すのは、一般医療機器の届け出をした「メディヒール(MEDIHEAL®)」。血行促進や筋肉のコリ・ハリの緩和、疲労軽減などの効果が期待できるリカバリーウェアだ。これまで「現場で働く人のための作業着」のイメージが強かったワークマンだが、健康志向やウェルネス需要を取り込む戦略を鮮明にした形だ。
「メディヒール」はルームウェアを中心に約30アイテムを展開予定。長袖シャツやロングパンツは1,900円と低価格に設定されているほか、毛布や敷パッド、アクセサリーといった幅広い商品群を投入する。ブランドアンバサダーには、陸上競技の元選手でタレントの武井壮を起用。「百獣の王」とも称される武井壮は、まさにブランドイメージに相応しい。コンセプトカラーは「回復」をイメージしたグリーンを採用し、他ブランドとの差別化を図る。
リカバリーウェア市場は世界的に拡大しており、2030年には14兆円規模に成長すると予測されている。各社が次々と新ブランドを投入しており、競争が一気に激化している。
今年7月には、美容・健康器具ブランド「リファ(ReFa)」や「シックスパッド(SIXPAD)」を展開するMTGが、新ブランド「レッド(ReD)」を発表。男性用のVネックインナーの半袖シャツ、ロングボクサーパンツは、それぞれ3,960円だ。「レッド」はブランドアンバサダーに俳優の大泉洋を起用し、キーカラーに情熱を象徴する赤を据えるなど、マーケティングでも存在感を示している。
また、カジュアル衣料チェーンのマックハウスも機能性繊維を開発するAddElm TECHNOLOGYと提携し、独自のリカバリーブランドを開発すると発表。参入企業はアパレルだけでなく、美容・健康、スポーツ領域にまで広がっている。
国内で先行するのは、今年2月に東証グロース市場へ新規上場したTENTIALだ。2025年8月期の通期業績予想では最終利益4億6400万円を見込み、売上高や利益は12カ月換算で前年比3倍超の成長ペースにある。スポーツ選手の愛用者も多く、機能性とブランド力を武器に市場を開拓している。
ワークマンはこれまで、低価格かつ高機能な商品設計でワーキング層やアウトドアユーザーを取り込み、空調服や防寒ウェアなど機能性市場を拡大してきた実績を持つ。今回の「メディヒール」も1,900円からという圧倒的な低価格を武器に、これまで高価格帯が中心だったリカバリーウェアをマス市場に広げる可能性がある。
ただし、リカバリー効果をうたうアイテムは消費者からの信頼性が鍵となる。アンバサダー起用で安心感を高められるか、注視は必要だろう。続々と参入するリカバリーウェア市場だが、そこかしこでおつかれが目立つ日本人を癒せるか注目が集まる。