
ワークマンは4月1日付で、取締役商品本部長の大内康二氏(53)が代表取締役社長に就任する。長年商品開発を担い、「ワークマン女子」やリカバリーウェア「メディヒール(MEDiHEAL®)」など数々のヒット商品を生み出してきた人物だ。現場出身の経営者として知られる大内氏は、社長就任後の最初の100日でなにを実行するのか。これまでを振り返りながら、ワークマンの競争優位性や海外展開まで話を聞いた。
■「マス化商品政策」を徹底
大内氏が社長就任後、最優先に掲げるのが「マス化商品政策」の徹底だ。ワークマンが近年進めている主力商品を全国で同時展開する戦略で、まずはその土台を固める。「私自身、商品開発にずっと携わってきましたが、まずは商品の生産と供給をしっかり安定させることが重要だと思っています」と大内氏は語る。商品供給の安定こそが、マス化商品政策を成功させる前提条件になるという認識だ。
「マス化商品」を象徴するのが、「メディヒール」だ。想定を大きく上回る売れ行きを見せ、2026年は年間2100万点という異例の数量を生産・販売する計画だ。生産体制も見直した。東南アジアに加えて中国にも生産拠点を設け、日本への配送リードタイムを従来の1カ月から2週間へ短縮する。国内には最大8000坪の倉庫を確保し、毎月100万点単位で在庫を積み増していく体制を整えた。
「昨年の秋冬は想定以上に売れ、ワークマンとして一つのターニングポイントになりました」と大内氏は振り返る。販売の勢いが生産計画そのものを押し上げた格好だ。店舗オペレーションの見直しも進める。これまで店舗ごとに売り場のばらつきがあったため、2026年秋冬からはマス化商品を全店統一の売り場で展開する方針だ。
「2026年秋冬では、このマス化商品だけは全店統一で同じ売り場、同じ場所で販売開始することを徹底していきます」としており、商品だけでなく売り方まで含めた統一を進める考えだ。その実現に向け、営業部門を管轄するSV部の中に「SV企画部」を新設した。売り場づくりを時間軸と数量軸で管理し、全国で統一された売り方を徹底する体制を整えた。
ただし、生産量が拡大しても品質を犠牲にするつもりはない。「もちろん生産体制はかなり大きくなりますが、品質は維持しなければいけません。どこでもいいから作ればいいというものではありません」と語り、ワークマンの強みでもある品質管理の重要性を強調する。
■10年の商品戦略で学んだブランド力
大内氏の経営観は、商品本部での約10年の経験の中で形づくられてきた。新商品開発を続ける中で、成功と撤退の両方を経験している。その一例がアウトドア・ギア事業だ。一時は売上68億円まで成長したが、現在は撤退している。「非常によくできた取り組みだったと思っています。ただ、ワークマンの店舗の中でポテンシャルを出すには市場が少し小さすぎました。またコロナ禍とコロナ後で市場性も変わりました」と振り返る。市場環境の変化が事業判断にも影響した。
こうした経験から学んだのが、ワークマンのブランド力の強さだという。「ワークマンブランドで商品を展開すると、それなりに売れはします。ただ、そのブランド力を過信するのか、それとも慎重にやるのか。そのバランスの見極めが重要です」と語る。「メディヒール」についても、その見極めがヒットを後押ししたと見る。「商品力や価格的魅力だけではなく、ブランド力の強さもヒットにつながったと感じています」と大内氏は分析する。機能性だけでなくブランドへの信頼が購買を支えたという認識だ。
■ 「ワークマン女子」でブランドを拡張
そのブランド力を大きく押し上げたのが、大内氏が商品部時代に仕掛けた「ワークマン女子」だった。当時、ワークマンは作業服ブランドのイメージが強く、女性向け商品の導入には社内でも驚きがあったという。「スカートを売り始めたときは、当時の社長が唖然とした顔をしていました(笑)」と当時を振り返る。それほどまでにワークマンのイメージ転換は大胆な挑戦だった。
しかしスタートから反応は良く、女性客の取り込みに成功した。結果としてワークマンのブランドは全国的な知名度を持つまでに拡張していった。現在は「ワークマン女子」から「ワークマンカラーズ」へと業態を進化させている。男性客が入りにくいという課題を解消するためだ。商品政策も変更し、「ワークマンカラーズ」と既存店舗で扱うメンズ商品を分けた。「カラーズで売るものと、ワークマンで売るものを変えています」と大内氏。店舗ごとの商品差別化を進める戦略だ。その結果、昨年秋冬にはカラーズ店舗のパンツ売上が、ワークマンやワークマンプラスを上回った。業態ごとの個性が徐々に定着しつつある。
■ 生活に必要不可欠な「エッセンシャルストア」
ワークマンの競争優位性について大内氏は、価格や機能だけではなく「総合的なブランド力」にあると考えている。「価格力や商品力はもちろん重要ですが、今は総合的なブランド力がかなり大きくなりました」と語る。そのブランド力を生かして目指すのが「エッセンシャルストア」だ。生活にとって必要不可欠な店を意味しており、大内氏が提唱する概念でもある。
「ワークマンはローカルエリアにもかなり店舗があります。多くのブランドが都市部へ向かう中で、私たちはローカルに出店し続けます」と大内氏は語る。都市集中とは異なる成長戦略を描いている。地域のニーズを見極め、それを商品開発に反映させることが重要だという。「地域にとってエッセンシャルな価値を見抜いて、それを商品にしていく。日本全国どこでもお客様のニーズに沿う商品を作っていくことが大切です」と説明する。地域密着の発想がワークマンの強みになるという考えだ。
■ 海外進出しても「ローカルから離れない」
2030年までの中期経営計画では、後半は海外展開が主軸になっていく。まずは台湾からスタートする予定だ。「場所の目星もついています。昨年は市場調査で2度台湾に行きました」と大内氏。出店準備はすでに具体的な段階に入っている。台湾市場には手応えを感じているという。「バイクが多くて高温多湿。アウトドア人気も高いので、商品的にはかなりいけるという自信があります」と語る。気候や生活環境がワークマンの商品特性と相性が良いと見ている。
台湾の次に狙うのはASEAN市場だ。タイ、マレーシア、シンガポールなどを想定している。「個人的にはベトナムが一番面白いと思っています。人口が1億人を超えていて若いですから」と話す。成長市場としての可能性に注目している。一方、中国市場には慎重な姿勢を見せる。「今の中国は店を作れば売れる国ではありません。ウェブ戦略など相当な労力をかけないと難しいと思います」と語り、簡単に進出できる市場ではないとの認識を示した。
10年後を見据えても、ワークマンの軸は変わらないという。「機能軸は絶対に失いません」と大内氏は言う。ただし、機能服だけにとどまるわけではない。「それがアパレルなのか、別のジャンルなのかは、エッセンシャルストアを目指す中で考えていくことになります」と将来の可能性に含みを持たせる。
少子高齢化や人口減少が進む中で、地域に必要とされる商品を模索し続ける考えだ。「海外進出していったとしても、私たちはローカルから離れません。そこで何を売るべきかを考えていく。それがこれからのワークマンだと思っています」と語り、地域密着の姿勢をあらためて強調した。機能服ブランドとして成長してきたワークマンが、生活に欠かせない存在「エッセンシャルストア」へと進化を遂げていこうとしている。現場から経営トップへと歩んだ大内康二・新社長の挑戦が始まる。








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