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島忠をめぐる買収合戦で分かったこと

Oct 25, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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ホームセンター業界第7位の島忠に対して、同業界第2位のDCMホールディングス(HD)が10月2日にTOB(株式公開買い付け)を行うと宣言。買い付け価格は4,200円で、TOB期間は10月5日から11月16日。島忠側も相乗効果が見込めるとして応じていた。買収金額は約1630億円。10月1日の終値3,520円から島忠株は4,200円まで急騰。そうこうするうちに、島忠に対してインテリア業界最大手のニトリが買収提案を行っていたのが判明した。4,200円で推移していた株価は、さらに上昇している。余談だが、実は島忠株の8%強を保有している大株主には村上ファンドの村上世彰氏がおり、笑いが止まらないと噂される。

10月21日にニトリは「島忠も含め、M&Aの可能性については日々検討中。決まっていることはまだない」と発表しているが、この買収合戦はどういう結末を迎えるのか。

ニトリは昨年10月にアパレル専門店の「エヌプラス(N+)」の第1号店を立川立飛内にオープンし、今年10月2日にはイオンモール柏店に第9号店をオープンするなど積極的にアパレル分野に進出している。当然デザインや企画を始めスタッフ拡充の意味も含めて、アパレル企業のM&Aが最優先の事案だと見られている。しかし、である。今回の島忠への追撃の形で買収参戦を見てみると、どうもニトリはアパレル企業に興味はないような気がしてきた。

島忠の2020年8月決算(2019年9月1日〜2020年8月31日)は、コロナ禍をものともせず、
・売上高1535億4000万円(前期比4.9%増)
・営業利益95億9800万円(同6.7%増)
・経常利益100億9400万円(同10.4%増)
・当期純利益64億2200万円(同6.2%増)

営業利益率は6.3%。実に立派な数字である。インテリア業界の巨人であるニトリが触手を伸ばすというのはよく分かる。こんな立派な会社がTOBを受け入れるというのも私の常識では考えられないのだが、それほどホームセンター業態というのは競争が激しいのであろうか。

アパレル業界では、コロナ禍でこんな増収増益の8月決算をマークできる企業というのは、それこそ「ワークマンプラス」が大当たりしたワークマンぐらいである。ホームセンター市場規模は4兆円程度と見られているが、市場規模9兆円と言われるアパレル業界に比べたらまだまだ恵まれている市場なのだろう。

ちなみに島忠に対してTOBを仕掛けた業界第2位のDCMホールディングスの2020年2月期(2019年3月1日〜2020年2月29日)の連結決算は、
・売上高4373億7100万円(前期比−1.9%)
・営業利益208億3200万円(同−0.9%)
・経常利益201億700万円(同1%増)
・親会社株主に帰属する当期純利益137億8300万円(同12.5%増)

営業利益率は4.8%。実に堂々たる数字である。

こういうある意味まだ健全な業界の決算数字を見てみると、いかにアパレル業界が疲弊しきったある意味不健全な存在だというのが分かるのである。

島忠をめぐるDCMHDとニトリの買収合戦がどんな結末になるのかは分からないが、アパレル分野に着々と進出しているニトリはよほど安価でなければアパレル企業を買収することはなさそうである。もうデザインや企画のスタッフの多くは、所属するアパレル企業に見切りをつけて辞めてしまっているのだから、朽ち果てた企業やブランドを買うことはないだろう 。アパレルの冬の時代はまだまだ続く。

 

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