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Japan|ちょっと心配な「アンリアレイジ」とオンワード樫山の協業

Oct 4, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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30年ほど前の話になるが、あるバッグメーカーの経営者が業界紙の記者に「我々は、『プラダ(PRADA)』のバッグと同じクオリティと同じデザインのバッグをその5分の1の値段で供給することができる」と話していたのをそのすぐ横で聞いたことがある。あまりに衝撃的だったのでよく憶えている。実際にそうした同じようなナイロンバッグを同じようなデザインで作って販売していたのだろう。なんの罪悪感もなく。しかし、あくまでも「同じような」でしかないのであって、「プラダ」のパラシュートナイロン風、「プラダ」のデザイン風でしかない。そんなバッグを欲しいと思う連中は、そもそも「プラダ」のバッグになど関心がなくて、ノーブランドのようなその辺にある安物のバッグを買っているのではないか。「プラダ」が欲しい人間は、いくら50万しようが「プラダ」を買うのであろう。

そんなことをオンワード樫山が今回デザイナーの森永邦彦と協業して来春夏から立ち上げるバッグとアクセサリーのブランド「アンエバー(ANEVER)」を見ながら感じた。この「アンエバー」は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のバッグ・アクセサリーラインでもあって、オンワードグループの公式EC「オンワード・クローゼット」を軸としたECと国内外でも卸売りを行うという。発売開始は3月上旬の予定で、「アンリアレイジ」のショップやECでも同時期に販売を始める。価格はバッグが6,000〜15万円、アクセサリーが2,000〜7,000円だ。

同ブランドのコンセプトは、「瞬間と永遠」「一点物と量産品」「二次元と三次元」という対極の概念をつなぐプロダクト開発になっているという。樹脂の中にドライフラワーを閉じ込めたパーツをアイコンにしたレザーやキャンバスのバッグ、ネックレスやイヤリングなどのアクセサリーが代表的商品だ。であるならば、なぜ「アンリアレイジ」ではなく、「アンエバー」なのだろうか。たぶんオンワード樫山サイドの要望をかなり受け入れた妥協点もあるからだろう。とにかく森永邦彦としては、契約料で一息つけるというのが大きかったのだろう。パリコレに登場するようになって、言うまでもなく台所は火の車のはずである。森永邦彦が人気デザイナーといっても、新品入荷待ちの行列ができるというような人気ではなくて、ごくごく一部のファッションフリークに熱狂的な支持があるというような人気なのである。オンワード樫山がそのあたりを勘違いしていないか、大いに気になるところではある。

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