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ポイントは「シューズ」か!?ヨーロッパの最近のブランド株異動

Mar 17, 2021.三浦彰tokyo, JP
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PHOTO:SEVENTIE TWO

コロナ禍で見逃されがちだが、ヨーロッパのラグジュアリーブランドに関する株式異動のニュースが相次いでいる。そのポイントはどうも「シューズ」ということになりそうだ。

まず、LVMH系投資会社であるLキャタルトン(L Catterton)、フィナンシエール・アガシュ(Financière Agache)がドイルのシューズブランドの「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」の過半数株式を取得した。買収価格は明らかにされていないが、業界関係者によると40億ユーロ(5160億円*)と見られている。

「ビルケンシュトック」の2019年の売上高は7億2000万ユーロ(928億円*)であるから、過半数株取得金額が5160億円というのはかなり破格の買収金額である。「ビルケンシュトック」は1774年に創業者のヨハン・アダム・ビルケンシュトック(Johann Adam Birkenstock)が「臣民の靴職人」として公文書に登録されたのがその歴史の始まりだ。1963年にコルクのフットベッドが取り付けられた医療用サンダル「マドリード」が市場に登場して、コンフォートサンダルのカテゴリーを確立。価格帯は中価格帯でいわゆるラグジュアリーブランドではないが、メイド・イン・ジャーマンが基本であり、2017年にはブランドイメージの改革に着手してラグジュアリーライン1774を立ち上げたり、「リック・オウエンス」や「ヴァレンティノ」などとの協業を行うなど、そのラグジュアリー化戦略は成功している。この8年間で150%成長している。

LVMH傘下の靴ブランドとしては「ベルルッティ」が知られるが、この他にはLVMHファッショングループの会長兼CEOのシドニー・トレダノの娘のジュリアが手掛けるシューズブランド「ノダレト(NODALETO)」が2019年秋冬シーズンに市場デビューを果たしている。ブランド名はトレダノ(TOLEDANO)のアナグラムである。

最近のホットなニュースとしては、「フェラーリ(FERRARI)」のオーナーとしても知られるアニェッリ(Agnelli)家の投資会社エクソール(EXOR)が5億4100万ユーロ(697億円)でクリスチャン ルブタン社の株式24%を取得したのが注目される。この株式取得は第三者割当増資の形で行われたが、両者は「この資本提携は『クリスチャン ルブタン』の次のフェーズへの進化を加速させる」としている。デザイナーのルブタンとビジネスパートナーのブルーノ・シャンベラン(Bruno Chamcelland)の両者は合計で過半数株を保有している。ルブタンはアニェッリ家とは数十年来の親交があるといい、今回の株取得も友好的に行われている。一時のルブタン旋風は収まっているが、シューズ分野ではラグジュアリーブランドの一角に数えられる数少ない存在であり、今回資金を得て今後の動向が注目される。「クリスチャン ルブタン(Christian Louboutin)」の年商は10億ユーロ(1290億円)に迫っているという業界関係者の推測がある。メンズはもちろん最近はビューティー分野へも進出している。

エクソールはエルメス・インターナショナルが保有する中国発ライフスタイルブランドの「シャン・シャ(SHANGXIA)」にも約8000万ユーロ(約103億円)投資したばかりで、今後はファッション業界に本格進出する可能性が大きいと見られる。

「ビルケンシュトック」と「クリスチャン ルブタン」というかなりポジションの違う2ブランドではあるが、次のマルチラグジュアリー企業や有力投資機関が「シューズ」を狙っていることが明らかになったような気がする。靴発祥のラグジュアリーブランドというと「フェラガモ」や「トッズ」などが挙げられるが、細かいサイズ対応のためか、どうもそのパフォーマンスは、ハンドバッグ発祥やラゲージ発祥のブランドや、ファッション発祥のブランドに比べて低いように見られてきたが、新局面が見られるのだろうか、今後の動きにも注目である。

*1ユーロ=129円換算(3月17日時点)

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