繊研新聞の11月10日号に信用交換所による10月の全国繊維業者の倒産(負債額1000万円以上)の数字が載っていた。倒産件数は24件で、前月比3件増加したが、前年同月比では9件減だった。負債総額は20億9800万円で、前月比57.2%、前年同月比では57.4%、それぞれ減少し、最小だった平成19年(2007年)4月に次ぐ低い水準だった。負債総額10億円以上の大型倒産はゼロ。
これはちょっと意外な数字である。コロナ禍で不振に喘ぐ大変な事態になっているのではないかと思いきや、前年よりも減少しているとは。これをどう解釈していいのか。大胆に類推すれば、大手企業は別にして、もう日本のアパレルビジネスは落ち込むべき水準まで落ちていて、もうこれ以上は悪くなりようがないということなのだろうか。
信用交換所では、新型コロナウイルス対策により、倒産件数は小康状態を保っているが、資金不足解消は一過性である可能性もあり、予断は許さないとしている。
確かに大手企業まで視野に入れてもレナウン、ラブリークイーンというあたりの倒産が目に付く程度だ。しかし、コロナというボディブローを食らって、マットに沈むのは第10ラウンド以降ということもある。どう考えたら良いのか難しいところだが、確実なことはなすすべもなく、「自然回復」を待っていたら、間違いなくいずれマットに沈むということだ。
同じく11月10日付けの繊研新聞に三井不動産の今期賃貸事業における営業収益予想の上方修正の記事があった。これも意外と言えば意外な数字だ。新型コロナウイルスの影響で4〜5月に同社の商業施設事業は一部店舗を除き臨時休館し、テナントに対して賃料を減免し、大きな減収減益になった。ただし大半が営業再開し、その後はららぽーと、ララガーデン、三井アウトレットパーク、ミヤシタパークなど新規開発施設も順調に回復したという。賃料減免も休業期間中の一律実施から個別対応にしたことで収益が改善。通期で収益は期初予想6000億円を上回り、営業利益も期初予想1130億円を上回るという。
信用交換所による倒産件数の前年を下げる低水準、大手不動産会社の賃貸事業の急回復など、にわかには信じ難い「明るいニュース」である。もしこれに現在言われている米ファイザー社の新型コロナ対応ワクチンの早期接種実施ということにでもなれば、めでたしめでたしということなのであるが。
ひとつだけ、悪化する一方の数字がある。それは自殺者数だ。警視庁の発表によると、10月の自殺者が全国で2153人となり、前年に比べて614人(約40%増)も増加しているのだ。自殺者数は7月以降、4カ月連続で増加している。ここしばらく減少する一方だった自殺者が急増しているのは、コロナ禍以外に原因が見当たらない。特に女性の増加幅の大きさが目立っている。10月でも女性の自殺者は851人で前年比385人(前年比82.6%増)も増えている。三浦春馬、竹内結子などの若手タレントの自殺やコロナ禍による生活環境の変化が影響していると言われる。こういう心理状態が支配的ではとてもファッションやアパレルにまで頭が回らないはずで、なんとも困ったものである。