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アダストリアは単一健保へ移行できるのか?

Feb 4, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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アダストリア東京本社(PHOTO:SEVENTIE TWO)

2月2日付の繊研新聞に実に興味深い記事(関麻生衣記者)が載っていた。アダストリアは現在加入している「東京ニットファッション健康保険組合」(以下KF健保)を脱退してアダストリア単一の健保を設立しようとしているが、すでにKF健保から3回否決されているというのだ。同社は引き続き、脱退手続きを行うとともに、今後も話し合いがままならないなら、「法に訴えるしかない」と訴訟準備も進めているという。実は私も以前はKF健保を使っていた。所属するINFASパブリケーションがアパレルの森英恵グループ傘下だったこともあって、KF健保を使っていたのである。KF健保の以前の名称は東京メリヤス健保で、さすがに「メリヤス」は時代に合わないということでKFに改称された。以前はKF厚生年金基金というものもあり、私も加盟していたが、不採算で立ち行かなくなり解散して、国の厚生年金組織に吸収されてしまった。そもそもKF厚生年金基金の退職後の厚生年金率は他の業界に比べて低かったのであるが、解散によりさらに受け取りが低くなってしまって愕然としたのを覚えている。

今回のKF健保についても、儲かっている企業は負担額も大きく、不満があるのだ。ことに構造不況業種化しているアパレル業界では、赤字化している企業の分まで支払っている儲かっている企業は、同じ負担金なら単独健保に移行した方がよほど良質な医療サービスが受けられると考えているはずだ。ただし、そうした一種の合理主義が業界別健保組合で通じるのかどうか。「アパレル業界の発展のためにこの互助組織に加盟することを誓います」という誓約書にアダストリアはサインしているはずである。その後のアダストリアの急激な成長は、この誓約時にはもちろん予想されていなかったはずであるが。アダストリア以外にもさっさとKF健保を脱退したいと考えている儲かっている企業も少なくないだろう。法廷訴訟でアダストリアが勝訴して脱退することになると、KF健保の存続はかなり危うくなりそうではある。構造不況業種の辛さが如実に表れたニュースである。

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