ここで注目される株価指標が純資産倍率(PBR)である。これは、その株価が1株当たりの純資産(EBR:発行済株式総数でその企業の純資産を割った数字。別名は解散価値と言われる。)の何倍になっているかという数字である。本来は株価は解散価値と同一であるわけだから、1.0が基準になる。上場小売業の平均PBRは1.7(2019年)になっている。
では、4大グループの株価、1株当たりの純資産及び純資産倍率の下表を参照してほしい。
百貨店4大グループにおいては、純資産倍率が0.5を割り込むと株を自動的に買うような投資システムがあるように感じられる。特にH2Oに関しては、4大百貨店の中でも業績回復が最も進んでいる。1月28日発表の第3四半期決算では、第3四半期のみでは営業利益33億9700万円(累計では−10億800万円)、経常利益42億9900万円(累計では−1億100万円)、親会社株主に帰属する四半期純利益19億9300万円(累計では−81億900万円)と完全に黒字化を果たしている。通期では営業利益を−100億円、経常利益を−100億円と予想しているが、通期での黒字化はほぼ確実な情勢になっている。
高島屋が12月25日に発表した第3四半期決算(2020年3月1日〜11月30日)によると、第3四半期のみでは営業利益−2億9600万円(累計では−105億1300万円)、経常利益−2000万円(累計では−109億3400万円)、親会社株主に帰属する四半期純利益−10億9300万円(累計では−243億7700万円)となっており、ほぼイーブンの状態になっているのがわかるが、4大百貨店の中で唯一第3四半期単体の決算が赤字である。
12月28日発表のJ.フロントの第3四半期決算を見てみると、営業利益は21億5400万円(累計では−184億8300万円)、親会社の所有者に帰属する四半期純利益6億7900万円(累計では−156億3200万円)と黒字に転じている(なお同社は会計基準がIFRS国際基準である)。
さらに1月27日発表の三越伊勢丹HDの第3四半期決算では、第3四半期のみでは営業利益29億4200万円(累計では−148億7000万円)、経常利益36億4800万円(累計では−134億4400万円)、親会社株主に帰属する四半期純利益20億2700万円(累計では−347億5900万円)と黒字転換している。
高島屋の第3四半期での業績回復が遅れているが、今後は前年比較ベース売り上げは回復するだろうし、利益面でも黒字転換して通年での赤字をどれだけ縮小できるかが焦点になっている。
第2回目の緊急事態宣言解除が3月21日にありギリギリ春物商戦が間に合ったということで、ファッション&アパレル関連の小売業は胸を撫で下していると思われるが、変異種の脅威も加わってこのままコロナ終息になるのかどうか、そう簡単ではないだろうが、最悪期は脱したと見てよいだろう。