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韓国ファッションに屈する!?日本のヤング市場に思う

Feb 5, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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昨年のユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた30語に「愛の不時着/第4次韓流ブーム」や「NiziU(ニジュー)」が入っているように、第4次韓流ブームが日本に巻き起こっている。一番分かりやすいのは原宿を完全に追い抜いた新大久保の賑わいだろう。チーズタッカルビやUFOフォンデュ、ハットグなどの看板が躍っている。これに対応すべく新大久保駅は2016年から改良工事を行い、出口専用改札口を新設するなど、昨年6月に完成した。

ファッション業界が驚かされたのは、昨年10月8日に渋谷・井ノ頭通りに韓国の人気セレクトショップ「エーランド(ALAND)」の日本第1号店がオープンしたことだろう。しかも、場所は渋谷西武B館のすぐ裏。かつて「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」渋谷旗艦店があった場所である。アダストリアが「エーランド」とパートナーシップ契約を結び、「グローバルワーク」の店をやめて、この韓国セレクトショップにしてしまったというのだから驚きである。ビジネスライクなアダストリアのことだから、基幹ブランドのひとつ「グローバルワーク」よりも「エーランド」の方が売れるとみての転換だろう。

渋谷店が売れれば、全国展開する予定だという。1号店の初年度目標売上高は7億円。地方在住客からの出店要望が相次いでおり、今後5年間で30店舗の出店を視野に入れている。将来的には1店あたり10億円を目指すという(以上fashionsnap.comより)。

この記事が事実なら、「本当かな?」と疑うような今後に対する自信である。オープンの10月8日は雨だったが、オープンのかなり前から100人程度の行列ができていたというし、20人のアルバイト募集をかけたら、800〜900人の応募があったという。

韓国ファッションを馬鹿にしているわけではないが、カラーやディテールにちょっと独特のテイストがあって、コンサバな傾向が強い日本人にはどうかなと思うのが私などオールドタイマーの感想なのだが、どうも今の日本の若者には、それがフィットしているようなのである。「SEVENTIE TWO」でアルバイトをしている大学生女子などは、よくソウルの弘大(ホンデ)に出かけて行って洋服を買うという。私がよくソウルに行っていた15年ほど前は、ファッションといったら明洞(ミョンドン)とか東大門(トンデモン)ということになっていたが、やはりかなり変わっているようだ。

昨年はジャパンイマジネーションが「セシルマクビー(CECIL McBEE)」のブランド休止を発表して、業界を驚かせた。1990年代のギャルブームに乗って一時はブランド年商200億円を超え、ギャルファッションの聖地である渋谷109のダントツブランドとして君臨していた。それが無くなるということは、今の若い女子に日本のギャルブランドが見捨てられたということなのかもしれない。バロックジャパンリミテッドやマークスタイラーはすでに中国資本に買収されている。ギャルブランドではないが、若い女子向けのカジュアル衣料メーカーとしては、アダストリアやパルグループホールディングスが東西で君臨している。そのアダストリアが「エーランド」とパートナー契約というのは、かなり重大な「事件」ではないのか。

苦境に立っている日本のアパレル企業や小売店は「EC比率をどんどん引き上げて、コロナに立ち向かいます」と言っているが、まず売っている商品自体に魅力がなければ売り上げなどできるわけがない。今の大手アパレルの地獄は、海外ブランドのライセンス生産を基幹事業にして、真のオリジナルブランドの開発を怠っていたからである(三陽商会の「バーバリー(Burberry)」が典型)。今のヤング市場でも、もしかしたら同様なことが言えるのかもしれない。「ダサい」と一言で切り捨ててきた韓国ファッションがその独自のテイストで、日本の若い女子の購買意欲を刺激し、方向性を見失った日本のヤングマーケットの間隙に割って入ろうとしているのなら、実に情けないことである。

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