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急落中のファーストリテイリング株に3つの理由

Mar 31, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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UNIQLO TOKYO

日経平均株価は、2月15日には3万84円と30年半ぶりに3万円台を回復した後は2月26日に2万8966円まで下げ、その後は2万9000円を中心にしたボックス相場が続き、4月1日の新年度入りをにらんだ膠着した相場展開になっている。

そうした中で、「ユニクロ(UNIQLO)」を手がけるファーストリテイリングの株価が冴えない。2月16日には終値で10万2500円になり、時価総額が10兆8725億円を記録。アパレル業界世界首位だった「ザラ(ZARA)」をメインブランドにするスペインのインディテックスグループの時価総額約814億ユーロ=10兆5006億円(1ユーロ=129円換算)を初めて追い抜いた。さらに3月2日には11万500円という史上最高値を取引時間内(終値ベースではない)にマークしていた。

しかし、その後は相場全体の軟調もあるが、9万円を割り込むような展開になり、実にこの1カ月で約20%の急落を見せている。

この急落の最大の原因は、3月19日の日本銀行の金融政策決定会合で、これまで原則年6兆円としていたETF(上場投資信託のことで日経平均株価やTOPIX=東証株価指数やS&P500指数などの株価指数に連動した投資信託が主流だが、この他に商品価格、商品指数に連動した投資信託も含まれる)の買い入れ記述を削除し、さらに購入しているETFの対象も日経平均株価連動型からTOPIX連動型に軸足を移すというもの。日経平均株価とは、日本経済新聞社が東京証券取引所第一部に上場する約2000銘柄のうちから、市場流動性の高い225銘柄を選定し、その株価をもとに算出する指数だが225銘柄は随時入れ替えが行われている。この225銘柄はいってみれば日本を代表する企業ということもできる。一方、今回日銀が株投資のメインに据えるTOPIX(トピックス)とは東証第一部上場企業の時価総額の平均額のこと。要するに特定の企業に片寄りがちだった株式投資姿勢を是正しようというのが今回の日銀の狙いである。

ちなみに日経平均株価に高い影響力(寄与度)を持つ株として上げられているのは、当然のことながら株価の高い銘柄ということになる。その株を買うことで日経平均を押し上げる寄与度のランキングは(2020年2月):
1位ファーストリテイリング :9.98%
2位ソフトバンク:5.34%
3位ファナック:4.59%
4位京セラ:2.97%
5位KDDI:2.61%
6位ホンダ:2.11%
7位トヨタ自動車:1.76%
8位セコム:1.69%
9位信越化学:1.67%
10位ダイキン工業:1.47%
という具合である。ファストリ株を1株買う方がトヨタ自動車株1株買うよりも5.67倍のインパクトがあるのだから、恥も外聞もなければ「ファストリ株を買えば日経平均は上がるのなら、いっそのこと買収してしまえば」ということになりかねないのであった。実際に日銀が大株主の企業ランキングでファストリは第2位で間接保有比率20.88%、間接保有額9786億円(2021年3月末)である。ファストリの最大株主は21.58%を保有する柳井正・会長兼社長だ。これを日銀が抜くということになるとちょっとした「事件」ではある。ちなみに第1位は半導体検査装置の世界的大手であるアドバンテストで間接保有比率25.49%で間接保有額は2208億円である。

しかし今回の日銀の決定で、ハシゴをハズされたことになったのは、このファストリ、ソフトバンク、ファナック、京セラ、KDDIといった値がさ株であった。特にファストリ株はダントツの被害者だったといっていいだろう。

もうひとつのファスト株急落の原因として上げられているのが、4月1日から実施される消費税の総額表示に関するファストリの決定である。従来の価格(税抜き)+消費税10%の一般的だった表示から、今後はこの10%を加えた価格表示に切り替わる。これによって企業にはなんの影響もないのだが、ファストリの「ユニクロ」と「ジーユー(GU)」はすでに3月12日から商品価格の表示は税込みながら従来と変わらず。つまり、実質的に9%の値下げになる。なんとも太っ腹な決定だが、「その分だけ数量が増えればいい」という考え方のようだ。1万円の「ユニクロ」は従来は1万1000円で消費者が買っていたわけだが、4月1日からは1万になるから、同じ売り上げを得るには数量ベースでは10%ではなく11%の増加がなければ、同じ売り上げにはならない。これはかなり難しいのではないか。実際、否定的な意見がかなりある。商品に自信がある場合は数量減少を考慮してでも値上げした方が、結果的に売り上げ増に結びつきやすいものである。しかし今回の総額表示変わらずの決定には疑問があり、単純に9%の値下げ分だけ売り上げは落ちるという見方すらある。「そんなことになれば8月本決算は目も当てられない」という見地から売りがかなり出ているというのである。

加えて、前述のように3月31日の年度末までにファストリ株などのパフォーマンスの良い株を売って利益を出して、コロナ禍でやられた事業の損失を補填しようという企業の動きがかなりあったようである。

ファストリ株急落をめぐる3つの原因を書いてきたが、最も懸念されるのは2番目にあげた価格政策(値下げ)がうまく機能するかどうかだろう。結果は8月の本決算には判明するのではないだろうか。ここまでコロナ禍をうまく乗り切ってきたファストリだが、行方が注目される。

 

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