しかし今回の日銀の決定で、ハシゴをハズされたことになったのは、このファストリ、ソフトバンク、ファナック、京セラ、KDDIといった値がさ株であった。特にファストリ株はダントツの被害者だったといっていいだろう。
もうひとつのファスト株急落の原因として上げられているのが、4月1日から実施される消費税の総額表示に関するファストリの決定である。従来の価格(税抜き)+消費税10%の一般的だった表示から、今後はこの10%を加えた価格表示に切り替わる。これによって企業にはなんの影響もないのだが、ファストリの「ユニクロ」と「ジーユー(GU)」はすでに3月12日から商品価格の表示は税込みながら従来と変わらず。つまり、実質的に9%の値下げになる。なんとも太っ腹な決定だが、「その分だけ数量が増えればいい」という考え方のようだ。1万円の「ユニクロ」は従来は1万1000円で消費者が買っていたわけだが、4月1日からは1万になるから、同じ売り上げを得るには数量ベースでは10%ではなく11%の増加がなければ、同じ売り上げにはならない。これはかなり難しいのではないか。実際、否定的な意見がかなりある。商品に自信がある場合は数量減少を考慮してでも値上げした方が、結果的に売り上げ増に結びつきやすいものである。しかし今回の総額表示変わらずの決定には疑問があり、単純に9%の値下げ分だけ売り上げは落ちるという見方すらある。「そんなことになれば8月本決算は目も当てられない」という見地から売りがかなり出ているというのである。
加えて、前述のように3月31日の年度末までにファストリ株などのパフォーマンスの良い株を売って利益を出して、コロナ禍でやられた事業の損失を補填しようという企業の動きがかなりあったようである。
ファストリ株急落をめぐる3つの原因を書いてきたが、最も懸念されるのは2番目にあげた価格政策(値下げ)がうまく機能するかどうかだろう。結果は8月の本決算には判明するのではないだろうか。ここまでコロナ禍をうまく乗り切ってきたファストリだが、行方が注目される。