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“存在してはいけないブランド”「フロムストック」とは? アダストリアが黒染めで衣料品廃棄問題に取り組む

Mar 18, 2020.高村 学Tokyo, JP
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「アダストリア・イノベーションラボ」の松﨑あさこマネージャー。「フロムストック」を着用(PHOTO:SEVENTIE TWO)

アパレル大手のアダストリアは、アパレル業界が抱える大量生産・消費・廃棄といった社会課題の解決に向けて積極的に取り組んでいる企業だ。「サステナブル経営へのチャレンジ」をCSRのスローガンに掲げ、社内では定期的に勉強会やセミナーを開催し、衣料品回収プロジェクトや渡良瀬エコビレッジでの和綿栽培など様々な取り組みを行っている。国内での在庫の焼却処分は行なっておらず、CO2やエネルギーの削減にも努めている。そうした活動の一環として、2020年2月28日にアップサイクリングブランド「フロムストック(FROMSTOCK)」を立ち上げた。

英国機械学会(IMechE)が2018年9月に発表したファッション業界廃棄物に関するレポートによると、全世界で生産された洋服の中で、おおよそ60%が1年以内で焼却か埋め立てで処分されているという。「フロムストック」は、こうした衣料品廃棄問題について、業界内だけではなく消費者に対しても啓蒙していくことを目的に誕生した。その陣頭指揮を執るのが、「アダストリア・イノベーションラボ」の松﨑あさこマネージャーだ。「一番に目指したことは、メッセージを伝えることです。フロムストックの商品を通して世の中にはこういう問題があることを伝えたかった」と、語る。

「フロムストック」は、売れ残った“倉庫の服”を、シンプルでロスの少ない“黒染め”の手法によって新たに生まれ変わらせ、キズや汚れも含めて新しい価値に転換して販売する。黒はファッションを語る上で欠かせないカラーのひとつであり、黒く染めることで倉庫の服を新たな価値とともに甦らせる。「フロムストック」の黒染めは、環境に配慮した設備を整えた日本有数の染工所の大染が担い、使用する染料にこだわり、きちんと排水管理を行うことで環境への負荷を低減させている。

プライスレンジは、Tシャツ・カットソーが3,000〜8,000円、ボトムスが6,500〜10,000円で展開している。松﨑氏は、若い方にも気軽に購入してもらいたいという思いがあったと言い、「サステナビリティやエシカルに注力するブランドは、その特性により高価格帯になってしまう傾向があります。若い方たちに話を聞くと、こうしたことへの意識は高いのに手が届かないというミスマッチがあると感じていました。フロムストックは、手の届きやすいプライスで提供することもこだわりです」。

「フロムストック」は商品だけではなく、ブランドに関わる資材もできるだけ環境に配慮した素材を採用している。石灰石からできる紙「LIMEX(ライメックス)」を下げ札や店頭ポスター、パンフレットといった資材に用いている。石灰石は国内自給率100%で、「LIMEX」はリサイクルすることも可能だ。商品パッケージのプラスチックは、生分解を促し、二酸化炭素や水に変化する「P-Life(ピーライフ)」を添加している。ショッパーは作らずに、ブランドメッセージが記載された商品パッケージをそのまま持ち帰ってもらう。そのパッケージには5ヶ国語でメッセージが記され、海外への発信も意識している。

「業界だけでなく地球環境にとっても、廃棄在庫がなくなることは良いこと。このブランドがなくなることがゴールでもあり、そういう意味では“本当は存在してはいけないブランド”なのです。生産の過程でどうしてもロスが出るため、在庫をゼロにすることは難しいですが、いつかこのブランドが必要なくなる日がくると思って取り組んでいます」と、松﨑氏は「フロムストック」に対する思いを語った。

ローンチでは、約100点がラインアップされ、順次ポップアップストアをオープンした。4月には公式オンラインストアもオープンする。

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