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Global|デザイナー交代で「ジバンシィ」は浮上できるのだろうか?

Jun 19, 2020.橋本雅彦Tokyo, JP
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「ジバンシィ」公式ホームページより

LVMHが擁するブランドである「ジバンシィ(GIVENCHY)」の前任アーティスティック・ディレクターのクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)は、3月1日のプレタポルテのショーを最後に4月に退任していたが、その後任がマシュー・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)に決定した。ウィリアムズが表舞台に立っていたのは、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)の後を受けて、2006年にLVMH傘下ブランドの「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」のデザイナーになった時だ。2009年秋冬からはピーター・デュンダス(Peter Dundas)にバトンタッチしている。ちなみにデュンダスの後任はマッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)だ。今回の就任について、LVMHファッショングループのシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)会長兼CEOは、「LVMHプライズのファイナリストにノミネートされたこともある彼が、今日最も才能ある人物に成長したことを嬉しく思う」とコメントを寄せている。

ウィリアムズは現在、「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」というストリートブランドを手がけているが、「ジバンシィ」ではオートクチュールとプレタポルテも手がけなくてはならないから、今後どういう動きを見せることになるのだろうか。思い切った人事である。

ジバンシィ社は4月1日付で、フィリップ・フォルトゥナト(Philippe Fortunato)前CEOが退任し、新CEOとしてルノー・ド・ レスケン(Renaud de Lesquen)=ディオール(Dior)・アメリカ社長が着任しているから、新CEOと新クリエイティブ・ディレクターでの船出ということになる。しかし、その航海は順風満帆というわけにはいきそうもない。リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)とマルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)CEOがセットで「バーバリー(BURBERRY)」へ移籍してからの「ジバンシィ」は混迷の度を深めている。

まず、なぜクレア・ワイト・ケラーは辞任してしまったのだろうか。「ジバンシィ」では3年務めたに過ぎないのだが少なくとも、このファッション界きっての美貌の女性デザイナーはマスコミでの評判はすこぶる良かったのである。特にそのオートクチュールは、前任のリカルド・ティッシのガンダムチックだとかトライバル趣味の横溢するアグレッシブな「ジバンシィ」に比べたら、多少エレガントに傾いてはいたが、少なくともユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)が創業したルーツに根差していたことは明々白々だったのだ。2018年の英王室のヘンリー王子&メーガン妃のウェディングドレスのデザインが話題を呼んだことも記憶に新しい。「ジバンシィ」というのはそういうブランドであったはず。

今回のデザイナー交代は、何を目指していたのか?

ウィリアムズはストリートラグジュアリー寄りのデザイナーで、「色彩の魔術師」と言われ、言ってみればクレア・ワイト・ケラーとは真逆の存在。最近プレタの営業が苦戦していたからと言って、そんな簡単な交代で挽回ができるとも思えない。

もうひとつとして考えられるのは、クレア・ワイト・ケラーがジバンシィ社の現状にサジを投げて、さっさと出ていったのではないかという見方。どう見ても、クレア・ワイト・ケラーは引く手あまた。このコロナ騒ぎが収まればそのうちに業界に復帰するのは明らかだろう。それほど彼女は得難い存在なのだ。「クロエ(Chloé)」で2011年から2017年の6年間クリエイティブ・ディレクターを務めたが、現在のナターシャ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)で苦戦を続ける「クロエ」に里帰りというのも考えられないではないし、いろいろと「お誘い」があるのではないだろうか。LVMH内に留まる可能性もある。

今回のマシュー・ウィリアムズの選択というのは、どうもその場シノギの感が無きにしも非ずなのだ。「エミリオ・プッチ」でラクロワのピンチヒッターとして使われ、今回「ジバンシィ」でもピンチヒッターという感じで、LVMHにいいように使われている感が無きにしも非ずなのである。「ジバンシィ」の今後よりも、むしろクレア・ワイト・ケラーの今後の方が気になるというのが正直なところである。

どうでもいいことだが、マシュー・ウィリアムズがかつてデザイナーをしていたLVMH傘下の「エミリオ・プッチ」というのは、ラグジュアリー市場では全くその名前を聞かなくなってしまった。こちらは復活をかけて何かするということもなく、深く潜航しているようなのだが、まあLVMHにはまだまだこうして次の出番を待っているブランドはいくらでもあるのだが。

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