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「ガイアの夜明け/百貨店サバイバル」が教える百貨店再生のキモとは!?

Apr 2, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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「ガイアの夜明け」公式HPより

3月30日のBSテレビ東京の「ガイアの夜明け」(22:00〜22:55)は「百貨店サバイバル」と題して長らく続く百貨店不況を断ち切るべく立ち上がる三越伊勢丹・高島屋の百貨店マンの奮闘を描くドキュメンタリーだった。TVマンの新鮮な視点で「百貨店再生」をどう見ているのかに興味があり視聴した。

 まず冒頭は2月28日に、1995年の開業から26年の歴史を経て閉店した三越恵比寿店の閉店セール最終日の映像だ。そのシーンでは2020年に百貨店の店舗数が50年ぶりに200店割れ(前年より12店舗減少して196店)しているという日本百貨店協会によるデータも紹介されている。50年ぶりというと1970年以来だ。同協会によればピークは1999年の311店である。売り上げのピークは1991年の9兆7130億円で、昨年は前年比25.7%減少で4兆2204億円だった。もう何度も書いているが、バブル経済が崩壊した1991年以降も1999年まで百貨店は店を増やし続けていたのである。「すでに計画していたから、中止するより作った方が被害は少ない」とかいう論理で利益の出ない出店を続けていたのである。もう無能無策を超えて狂気としか言いようのない拡大志向で、ある意味で1930年代の日本のアジアにおける大東亜帝国主義並みの妄想であった。この歴史を百貨店の経営者・従業員には何度でも肝に命じて欲しいものである。

 続いて番組では、伊勢丹新宿店における婦人服フロアなどのリモートショッピングに携わる店員を紹介している。顧客のスマホと売り場のパソコンでショッピングするシステムだ。顧客はスマホにアプリを入れるだけでこうしたショッピングができるというもので、三越伊勢丹では4店の42ショップで採用され、その顧客数は1万人を突破しているという。もっと早く始めるサービスだろうと思わずにはいられなかった。

 一方、高島屋では創業家一族の一員で同社でバイヤーなどを務めた飯田新吉氏が初代飯田新七が残した「晋翁雑記」の中から最も重要なキーワード「進取の気象」を紹介している。そうした精神を受け継いで2017年に始まった社内起業制度フューチャープランニングを番組では取り上げている。これまでに一次審査に95件の応募があり、これを通過したものが詳細な事業計画を提出し、さらに本審査を経て事業がスタートするという。昨年は5つの新規事業がスタートした。

 どんな新規事業かというと、高崎高島屋で始まった「メゾン・ド・エフ」という店内に設けられたセレクトショップがそのひとつ。提案者は主に紳士服を担当した松屋出身者で6年前に郷里の高崎高島屋に中途入社した男性。繊維の町桐生などの地元素材を生かしたオリジナル商品も提案している。また55歳のベテラン社員が日本橋本店の紳士服フロアで始めたシューシャインカウンターも紹介されている。昨年8月にスタートしたこのサービスの料金は、同店で靴を買った顧客は500〜2500円、そうでない顧客は1500〜4000円だ。

 もうひとつは、すでに顧客の半分以上が60歳以上という高島屋の現状を考えて今年4月からスタートしている機能訓練特化型「デイサービス」の「タカシマヤ ユアテラス 二子玉川」だ。この新規事業のため高島屋では定款まで変更したという。元気に自分の足で高島屋で買い物ができるようにということで始められたビジネスだという。

 番組では4つのチャレンジ(①リモートショッピング、②地方店の店内メンズセレクトショップ、③シューシャインサービス、④高齢者向けデイサービス)が紹介されているが、生き残りのための必死の「もがき」が感じられた。この「もがき」は「10年遅いよ」とは言うまい。全百貨店マンがこの4人くらい真剣にもがいたら生き残りは可能だろう。もう百貨店は1970年代、1980年代のわずか20年ほどの黄金期の虚栄のイメージがひとり歩きして、本人たちは未だに錯覚し、まわりも錯覚し続けている。もともと大それた商売ではないということを徹底して知らなければいけないのだ。靴磨きや介護士稼業をしてひとりひとりが日銭商売をするような気持ちを取り戻さないと生き残りなど難しいのである。仕入部長を5年やったら豪邸が建つなどということが平気でまかり通っていた馬鹿馬鹿しい過去を徹底的に払拭し、商人道とは何かをもう一度考え直すことから始めるべきだろう。

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