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ファストリも見捨てた「ギャップ」はどうなる?

Oct 30, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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アメリカは新型コロナウイルスの感染第二波に見舞われ、第一波を上回るその感染拡大を懸念して、ニューヨークダウ平均もこのところ(10月27日、28日)大幅な下落を続けている。当然アパレル関連企業も、その感染第二波の影響を受けているが、中でも、毎週のように悪いニュースが出ているのがGAP社、なかんずく「ギャップ(Gap)」ブランドである。

10月22日には、「ギャップ」のヨーロッパの直営店の撤退が検討されていると報じられている。多分そうなるだろう。それほど「ギャップ」は厳しい状況におかれているのだ。

注意したいのは、「ギャップ」の不調はこのコロナ・パンデミック以前から論じられていたということだ。すでにGAP社において、売上高ナンバーワンのブランドは、「オールドネイビー(Old Navy)」であって、社名を冠した「ギャップ」ではないのはすでに5年ほど前からだ。価格が「ギャップ」の半分程度の「オールドネイビー」は、低価格ブランドとして、中流以下のファミリー層を中心に支持が広がっているのだが、そうした層から「ギャップ」は見捨てられているのだ。かといって、ファッション志向しても、「ザラ(ZARA)」や「H&M」などの、いわゆるファストファッションとしては勝負にならない状況である。簡単に言って、「存在価値」がなくなりつつあるのだ。

10年ほど前に、年商1兆円を超えたばかりの「ユニクロ(UNIQLO)」を擁するファーストリテイリングが年商5兆円構想をぶち上げた時も、腹づもりとしてはSPA業界第3位のGAP社を買収することが、念頭にあったはずである。すでに年商2兆円を超えたファーストリテイリングは、第2位の「H&M」が射程に入ったこともあり、GAP社買収というカードはすでに捨ててしまったようである。同社にとっても、もう「ギャップ」ブランドは全く魅力のない中途半端な存在に映っているのではないだろうか。「ギャップ」が持っているシェアは、すでに「ユニクロ」がカバーできるという展望が柳井正・会長兼社長にはあるのだろう。「ギャップ」が志向しているような中途半端なファッション性というものはもう誰も求めていないのだ。もう「ファッション」というものは、ラグジュアリーブランドが提案するようなものを、安価で分かりやすく噛みくだいて提案するものに変容してしまっているのだ。その最たるものが「ザラ」ということになる。

そうした「ファッション」路線に見向きもせず機能性と究極までミニマル化したデザインの世界に活路を見いだした「ユニクロ」が「ザラ」の対極の存在として成長していく確信を柳井正・会長兼社長は持っているように見える。

そうした中で、「ギャップ」ブランドはどうなっていくのだろうか。まだまだ悪いニュースは続いていきそうに思われる。

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