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ギャルドが中国事業を急拡大する理由は?

Sep 17, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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4月16日にオープンした寧波阪急

インテリア、空間、オフィスなどのデザインをはじめデザインコンサルティング、コーディネーションに至るトータルデザインサービスをグローバルに提供するギャルドの中国事業が急拡大している。

4月16日には、浙江省寧波市(人口約850万人)に寧波(ニンボー)阪急がオープンしたが、その全フロアの環境のインテリアと館全体のファザードの設計を担当したのがギャルドだ。寧波阪急は、寧波市政府が主体の大規模な開発プロジェクト「東部新城開発」(開発区域面積は1,600ha)の一環として、寧波阪急商業有限公司が開発地区の「寧波中心」に出店した事業開発で、商業延床面積 17万6,000㎡(地上6階-地下1階)という地域最大級の巨大店舗だ(ちなみに阪急うめだ本店は8万㎡である)。新型コロナウイルスの影響に加えてラグジュアリーブランドの獲得に時間がかかったようで開業が遅れたが、最終的にはメインのラグジュアリーブランドのほぼすべての獲得に成功している。なお寧波阪急の初年度売上高予想は500億円だ。

この寧波阪急をはじめとしてギャルドの中国事業を指揮する室賢治専務クリエイティブ統括本部本部長は、現在の中国の小売市場を次のように分析している。なお室専務の小売データは中国商務部に拠っている。

「2019年の中国の小売業界の売上高は前年比7.5%増の5兆6400億ドル(約620兆円、1ドル=110円換算)だった。これに対して2019年のアメリカの小売業界は同3.3%増の5兆5300億ドル(約608兆円)だった。つまり中国が初めてアメリカの小売市場を抜いた記念すべき年になった。全世界的に見て中国は新型コロナウイルスによる被害も少なく、この差は2020年、2021年でさらに広がっている」と話す。

ギャルドの中国事業を指揮する室賢治専務クリエイティブ統括本部本部長

また流通業態別の市場動向について、同専務は「2020年は、ショッピングモールが前年比4.0%、百貨店が−12.1%、GMSが4.3%増、コンビニエンスストアが前年並みだった。百貨店が厳しいのは日本と同じ。とは言え、2016年から2019年までは前年をなんとか上回っていたが、新型コロナの影響で大きく割り込んだ。特にラグジュアリーブランドの品揃えが少ない国営百貨店の落ち込みが激しかったようだ。また中国の小売市場の35.3%はECによるものだが、これは世界のEC売上高の55.8%を占める。不振の百貨店チャネルでもECとの連携がうまく行っている民間百貨店は売り上げを伸ばしている」。

さらに新型コロナウイルス感染を押さえ込んだ2021年は小売市場も復活しており、新設の商業施設オープンが相次いでいる。ギャルドもそうした設計コンペを勝ち抜いて数々のオープン事業に参画している。

そうした中で、蘇州に9月末にオープンする「蘇州JOY BREEZE」は建築面積18万㎡と大規模。穀物商社が祖業である国営コングロマリット企業コフコの不動産事業として進めているプロジェクトでギャルドが手掛けるのは室内の全フロアの環境デザインである。

「我々は北京で2020年12月にオープンした『北京大興JOY BREEZE』というライフスタイル型モール内全フロアのデザインを行った。これは北京市大興区の旧SCを次世代型ショッピングセンターにリニューアルしたプロジェクトだった。今回の『蘇州JOY BREEZE』はこの地区の大規模再開発のひとつのパートに過ぎず、周囲では急ピッチでビル建設が進んでいる」と室専務は語る。

ギャルドの中国でのオフィスは、営業スタッフ5人が所属する上海にメインオフィスが置かれている。この他に北京にはエージェントがあり、香港オフィスにデザイナーが2名というのが現在の布陣でデザイン業務は東京、大阪事務所で対応している。

「新型コロナの影響で、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどではプロジェクトの中止が多いし、中東でも大きな開発プロジェクトは動きが止まっている。中国戦略強化は当社にとっても必然の動きだ」と室専務。

また最近の中国でのプロジェクトについては、「ここ3年ぐらいの傾向として、しっかりリサーチしてきちんとコンセプトを決めるようになっている。採算の管理はしているが、それよりも質感を重視して、集客力を最大のポイントにしている。ECとの連携も視野に入れての方向性だ。当社もこうした要望に応えるように提案力の強化に努めている」と同専務。

 

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