BUSINESS NEWS
  • share with weibo
  • share with LINE
  • share with mail

4年で1億ドルブランドになった「グロシエ」のデジタル戦略とは

Sep 20, 2018.New York, US
VIEW55
  • share with weibo
  • share with LINE
  • share with mail
「グロシエ」の公式インスタグラムより

NY発のスキンケア・コスメブランド「グロシエ(Glossier)」は、短期間でインターナショナルデジタルブランドとして成功した、近年最も注目を集める存在だ。同社CEOのエミリー・ワイス(Emily Weiss)は「W」や「VOGUE」といったファッション誌で編集アシスタントとして経験を積むと同時に、ミレニアル世代にフォーカスした自身のブログ「Into the Gloss(イントゥ・ザ・グロス)」を設立。ブログで”it”ガールと呼ばれる今をときめく話題の女性やモデル、編集者、そして時には2世セレブたちへのインタビューや、愛用コスメやメイクのコツ、商品などの紹介をすることで有名ブログへと成長し、「グロシエ」が浸透する元となるコミュニティを形成していった。ブランド理念は”less is more”で、メイクで顔をごまかすのではなく、本来の自分の自然な美しさを引き出す商品を提案している。

設立から4年で「グロシエ」は急速にグローバルで成長し、同社の広報担当者によると、これまでの総売り上げ8600万ドル(約96億円*)の20%は広告効果からで、残り80%は消費者の口コミや紹介、アンバサダーを起用した宣伝から収益が創出されたという。オンライン市場において、同社は国境を超えて、カナダ、イギリス、スウェーデン、デンマーク、そして10月からはフランスにも進出する予定だ。実店舗はニューヨークとロサンゼルスの2店舗のみだが、ブランドと顧客が簡単に繋がれるように、インスタグラムのメッセージ機能を使って製品が合わない場合の無料返品などのサービスを提供し、消費者の関心を引くことに成功した。それだけでなく、「グロシエ」は顧客との緊密な関係を維持し、製品に対する意見やニーズをきちんと捉えることができている。実際、最近の「Milky Jelly Cleanser(ミルキージェリー低刺激クレンザー)」は消費者の協力を得て商品化したものだ。また「Into the Gloss」のようなプラットフォームを使って消費者とコミュニケーションをとりリサーチなどを実施することは、他社との大きな違いを生み出す戦略的に価値のあることであると「グロシエ」は証明している。ワイスCEOは「ルールメーカーとトレンドメーカーは同一人物ではなく、今の時代にそういった考えで買い物をする人は少ない。女性はコスメについて友人と意見を交換し、新たな商品を見つけるようになっている」と指摘する。口コミを有効活用することで、国際的なプロモーション活動にかかるコストを削減し、さらにインスタグラムのフォロワーを集めたミーティングを開催したり、サイトユーザーについてのリサーチから判明した影響力のあるコアユーザーを、ランチや食事会に招いたりするのも戦略の一つだ。

#glossierpink Instagram

小規模なビューティ企業では大衆の注目を集めるために、インフルエンサーや有名人の起用を主要な戦略にしがちだが、「グロシエ」は顧客が何を求めているかもきちんと把握している。商品が全てフォトジェニックなデザインである上に、インスタグラムでは「#glossierpink」という独自のハッシュタグを作り、顧客がブランドを象徴するパステルピンクのパッケージと日常で目にするものを関連付けられるようにしている。こうした関連性がブランドへの一貫したエンゲージメントを確保することに繋がっているのだろう。また、口コミについても良い評価と悪い評価の両方をサイトに掲載することで、信頼関係を構築している。さらにはユーザーが作成したコンテンツを選考基準に「グロッシアー・ガール(Glossier girl)」を指名し、誰でもサイト上で有名になれるといった企画も実施している。手頃な価格で全員が利用できるSNSを、ポジティブなメッセージの発信の場として利用しない手はない。成長を続ける「グロシエ」がアジアに進出する日はそれほど遠くないだろう。

*1ドル=112円換算(9月20日時点)

READ MORE