
グンゼは8月6日、アパレル事業の抜本的な構造改革の一環として、大規模な生産・物流再編を発表した。対象となるのは、兵庫県朝来市の梁瀬工場と連結子会社の養父アパレル、さらに山形県の東北グンゼと秋田県の矢島通商の計4拠点。梁瀬工場と養父アパレルは2026年3月末、東北グンゼと矢島通商は同年12月末にそれぞれ閉鎖する。
今後、国内のインナーウエア生産は京都府宮津市の宮津工場に集約し、閉鎖拠点の生産機能は宮津のほか、グンゼの海外拠点であるタイおよびベトナムの関係会社工場に段階的に移管していく方針だ。
また、生産だけでなく物流体制も見直す。グンゼ物流が運営する京都物流センター綾部事業所は2025年12月末、福知山事業所は2026年12月末をもって、それぞれ閉鎖される予定だ。生産・物流拠点の再編によって、事業全体の効率化と固定費削減を目指す。
構造改革に伴い、グンゼは人員体制にもメスを入れる。40歳以上の社員を対象に希望退職を募ることを明らかにし、募集期間は10月10日から24日まで。退職日は2026年1月20日を予定している。募集人数は明示されていないが、今後の事業スリム化に向けた大きな動きとなる。
これらの施策に伴う事業構造改善費用として、グンゼは34億円を特別損失として今期に計上。ただし、業績予想の修正は行っておらず、2026年3月期の連結業績見通しは、売上高が1400億円(前年比2.1%増)、営業利益は85億円(同7.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は28億円(同55.4%減)を見込んでいる。
同日発表された2026年3月期の第1四半期決算では、売上高は322億4000万円(前年同期比3.4%減)、営業利益は18億600万円(同13.3%減)と、主力アパレル事業の不振が影響。最終損益は14億7300万円の赤字と、前年の16億円黒字から大幅な悪化となった。
特に構造改革の対象となっているアパレル部門は厳しい状況にある。第1四半期のアパレル事業の売上高は147億6300万円で、前年同期比0.2%減と横ばいで推移したが、営業利益は3億6300万円と同35.6%減と大幅な落ち込みを記録。原材料価格や人件費の高騰が重荷となっており、収益性の改善が急務となっている。
グンゼは今後、高収益体質への転換を目指し、国内外のサプライチェーンの最適化を加速させるとみられる。アパレル事業では、消費者ニーズの変化に対応した商品開発と、コスト構造の見直しが進められており、今回の再編はその一環だ。
一方で、国内に根差した企業として地方経済に一定の影響力を持つグンゼによる複数拠点の閉鎖・希望退職募集は、地域経済や雇用への波及も避けられない見通しだ。こうした動きが、他のアパレル・インナー業界企業にも波及する可能性もあり、今後の動向が注目される。