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SPA世界一を賭けた熱い闘い インディテックスvsファーストリテイリングの今後

Jun 10, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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銀座の「ザラ」(PHOTO:SEVENTIE TWO)

年商や時価総額にどれほどの意味があるかは、さまざまな判断があろうが、SPA(アパレル製造小売業)の分野でデッドヒートを繰り広げているのが、インディテックス(主要ブランド「ザラ」)とファーストリテイリング(主要ブランド「ユニクロ」)である。前者は1月期決算、後者は8月期決算であり、またユーロと円という異なる通貨をベースにする企業ではあるが、今回のコロナ・パンデミックでファーストリテイリングがSPAナンバーワンのインディテックスの牙城に急接近していることだけは事実である。

まず時価総額だが、ファーストリテイリングは今年の2月16日に株価が初の10万円を突破すると同時に、時価総額で10兆円を突破して、インディテックスを抜いて、アパレル関連企業として時価総額世界首位に躍り出た。画期的出来事ではあったが、その後日本銀行がETF(上場投資信託)の買い入れを見直す株投資を打ち出したことで、ETFの中心的銘柄だったファーストリテイリングの株価はジリジリと下げて現在(6月10日)株価は8万3000円台まで下げており、時価総額も8兆8300億円まで減少している。

一方、インディテックスの株価は、今年1月29日に24.49ユーロという安値をつけてからは上昇に転じて、現在30ユーロ台を回復しており(6月9日終値31.60ユーロ)、時価総額も997億6300万ユーロ=13兆2684億円(1ユーロ=133円換算)とファーストリテイリングを抜き返して、一気に13兆円まで時価総額を増大させている。ファーストリテイリングとはかなり差がついてしまっているのが現状である。

一方、両社の年商と営業利益を見てみると:
インディテックス2021年1月通期決算
・売上高 204億200万ユーロ(前年比27.8%減)=2兆7134億6600万円
・営業利益 15億700万ユーロ(同68.4%減)=2004億3100万円

ファーストリテイリング2020年8月通期決算
・売上高 2兆88億4600万円(前年比12.3%減)
・営業利益 1493億4700万円(同42.0減)

ファーストリテイリングが売上高12.3%減でなんとか2兆円に踏みとどまったのに対して、長期にわたる欧米でのロックダウンが大きな打撃になったインディテックスは、その倍以上の減収幅で3兆円を割り込んだ。3兆円vs2兆円という両者の開きはここに来て一気に縮小したことになる。営業利益についてもほぼ同様なことが言える。

時価総額、年商&営業利益の二つの指標から両社を比較したが、これはいい勝負になったというのが実感だ。ヨーロッパのコロナが完全に収束の兆しを見せているのに対して、日本はまだ緊急事態宣言下にあり、7月には東京オリンピック開催も控えている。この辺りはどう影響してくるだろうか。

今後のポイントは、インディテックスがコロナ前から進めていた「在庫統合システム」、ファーストリテイリングが現在掲げているモットーである「エンド・トゥ・エンド」(サプライチェーンのあらゆるプロセスを自社でコントロールし顧客ニーズを起点に商品やサービスを最高の形で提供する)や「無駄なものをつくらない、無駄なものを運ばない、無駄なものを売らない」のスローガンがコロナ後にどう機能して業績貢献するかにかかっている。

この両社の今後のデッドヒートに注目したい。

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