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Japan|ダニエル・ウェリントンって実在する人物なの?

Sep 4, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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イラン・コレクション

ブランドのニセモノは言うまでもなく犯罪であるが、世の中には「怪しい」ブランドというのはいくらでもある。といっても、2年ほど前に飛ぶように売れた「妖怪ウォッチ」のことではない。今どき「妖怪ウォッチ下さい」などといい歳をした大人がセレクトショップで販売員に言ったら、販売員に吹き出されること確実だが、「『ダニエル ウェリントン』の時計を下さい」と言ったら、真面目に対応してくれるだろうから、世の中というのは不思議なものである。

このスウェーデン発のブランド「ダニエル ウェリントン(Daniel Wellington)」から初のジュエリーコレクション「イラン・コレクション(ELAN Collection)」が9月1日から原宿店、銀座店で限定先行販売するという記事を見かけた。「スウェーデン発なのにイランとはこれいかに?」などというダジャレはともかくとして、この「ダニエル ウェリントン」というブランドは、厳しいブランドの世界の生き残り第1ラウンドを生き残ったようなのである。田舎のオバさんしか持っているのを見かけたことがない「ジャンニ バレンチノ(GIANNI VALENTINO)」などという2大デザイナーのジャンニ・ヴェルサーチ(Giovanni Versace)とヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が共同製作したみたいな安っぽいブランドとは違って、東京の女子大生や金のなさそうなOLが満員電車でイヤというほどしているのを見かけたので、一体このブランドというのは何なのだろうと調べてみたことがある。

幸いにして、Wikipediaも作製されているので引用してみる。

創業者であるフィリップ・タイサンダー(en:Filip Tysander)は、旅行中にイギリス人男性のダニエル・ウェリントン(Daniel Wellington)と出会い、ウェリントンがNATOストラップと組み合わせたヴィンテージの腕時計をしていたことに触発され、時計メーカーを立ち上げたという。会社名とブランド名の「ダニエル ウェリントン」は、このイギリス人男性の名前であるダニエル・ウェリントンにちなむという。その腕時計のムーブメントはシチズンミヨタ製で、ベルトやブレスレット部分の製造と組み立ては中国で行われており、スウェーデンの時計メーカーではあるものの、スウェーデン製というわけではない。

ご丁寧にフィリップ・タイサンダーについては英語版Wikipediaに記載がある。2011年にタイサンダーは彼の最初の「ダニエル ウェリントン ウォッチ」を立ち上げ、2016年には同ブランドは2億3000万ドルの売り上げと1億1150万ドルの利益をもたらしたという。売り上げが243億円で利益は121億円という驚異的な収益である。本当かな?と常識のある人物は思うはずである。しかし、タイサンダーは2015年に「アーンスト・アンド・ヤング・スウェーデン・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー賞」で「男性スター・オブ・ザ・イヤー」を受賞しており、なんと2017年9月の「FOKUS」(スウェーデンの雑誌)には、写真入りで32歳のタイサンダー氏のインタビューが載っているのである!え、実在しているのか、というのが正直な感想である。では、「ダニエル ウェリントン」のインスピレーション源になったダニエル・ウェリントン氏は実在するのだろうか?

日本で「ダニエル ウェリントン」の展開をしているのは、1997年創業のビヨンクールというファッション品の輸出入を主な事業にする企業だ。子会社には、台湾でのアクセサリー販売、人材派遣会社、飲食業まで幅広い企業を擁している。しかし、この「ダニエル ウェリントン」が近年の大ヒット商品であるのは間違いないようである。

しかし、その時計もかなり売り尽くした感が出てきたのか、今回のジュエリー(というよりはアクセサリーと呼んだほうがいいとは思うが)の発表になったのではないだろうか。時計の方も、価格が今年9月1日から税込価格で表示されることもあってか、かなり値上げされ2万円台がその中心になっているのが注目されるところではある。

時計の分野でもラグジュアリーブランドが圧倒的に勢力を拡大する一方、時計をしない「NON Watch」層が拡大する中で、「ダニエル ウェリントン」が日本で成功を収めたことは否定できない。願わくは、インスピレーション源のダニエル・ウェリントン氏を登場させろとは言わないが、英語版で「メディアへの露出を極端に嫌っている」と紹介されているフィリップ・タイサンダー氏の来日を期待したい。私には「退散だあ」と聞こえて仕方がないのだが、ご尊顔を拝したいものである。

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