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Global|YSL先導でパリコレはデジタル開催へ移行か

May 2, 2020.橋本雅彦Tokyo, JP
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ラグジュアリー・ブランドからなるフランスのコングロマリット企業グループであるケリンググループ傘下のイヴ・サンローラン社(以下YSL)が、2020年内のファッションカレンダー参加を辞退した。つまりフランスオートクチュール&モード連盟主催である9月末開催予定のパリ・ファッション・ウィーク(PFW)21年春夏を含む年内のファッションスケジュールからの離脱表明をしたということだ。YSL社は世界情勢を見ながらクリエーション重視で今後の展開を進めるとしているが、その詳細は明らかにされていない。

早々とケリンググループのYSL社が年内離脱表明をしたことで、同グループのパリ・コレブランドである「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」などもこれに追随することが予想される。さらに、ケリングのライバルであるLVMHの動向が気になるところだが、同様に年内離脱表明に動いていくのではないだろうか。

というのは、このYSL社の離脱表明があった直後にフランス政府から5月11日以降の外出禁止緩和計画が発表されており、映画館や劇場、大規模美術館、5000人以上のイベントや集会は9月末まで封鎖が続く。この政府発表によれば、9月末のパリ・ファッション・ウィークの開催は封鎖の対象に該当するかどうかは微妙だが、常識的にはその開催はかなり難しそうだ。中止になれば6月のメンズ・コレクション、7月のオートクチュールに続いてのコレクションウィークの中止ということになる。「モードの都」パリの灯が消えるような事態ではあるが、デジタル映像を配信する開催への転換が進むのではないだろうか。

このデジタル開催は大げさに言えば「コレクション・ショーの民主化」と捉えることもできる。次シーズンの商品を選別するバイヤーにとっては別にリアルショーだろうがデジタルショーだろうがデジタル展示会だろうが問題はないだろうが、このリアルショーの何列目でショーを見れるかに命を懸けているジャーナリストに独占されているファッションショーがデジタル放映で一般にも開放されることは祝着である。リアルショーが持っているオーラが消え失せて、デジタル画像で繰り返し見たら「アラ」が目立って馬脚を現してしまったなどということも大いにありそうである。いずれ「年々歳々、リアルショーを開催するなんていうアンチ・サステイナブルなことはやめましょう。そんなことは2年に一度、いや3年に一度でいいんじゃないか」ということになるのではないだろうか。ブランド・プロモーションの場としてパリコレを利用している大手ラグジュアリー・ブランドは独自に大イベントを開催すればいいだけの話である。オートクチュール・ウィークはもちろんのこと、パリ・コレもあまりにも大手ブランド主導のプロモーションの場になってしまった。今回のコロナ・パンデミックがファッション・ウィークの本当の目的とは何なのかを考え直す契機になってほしいものである。

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