ケリング・ファウンデーション(Kering Foundation)は6月30日、暴力の被害に遭った女性をケアしサポートする施設の設立と運営のために資金提供を行うと発表した。家庭内暴力や未成年に対する性的暴行といった女性に対する暴力は、世界中の女性の3人に1人は被害者になっていると言われており、深刻化している。ケリング・ファウンデーションは2008年の設立以来、女性の支援を行う地域団体とのパートナーシップを強化し、資金調達の最前線に立つなど、女性に対する暴力の根絶に積極的に取り組んでいる。
6月30日にはジェンダー平等を支援するための世界的な集まり「ジェネレーション・イクオリティ・フォーラム」がパリのルーヴル美術館で開催され、マクロン仏大統領やケリング会長兼CEOでケリング・ファウンデーション会長のフランソワ・アンリ・ピノー(François Henri Pinault)らが出席した。フォーラムには、世界各国の政府や国際機関、市民団体などの代表者が参加し、ジェンダー平等に向けて、さまざまな協議や支援の表明がなされた。ピノー会長は、フォーラムでのスピーチで、女性に対する暴力と闘うためにグループとしての支援を強化することを表明し、またケリング・ファウンデーションは暴力の被害者である女性にシェルターやケア、サポートを提供する施設をフランス国内に15カ所開設するための資金として5年間で500万ユーロ(6億6000万円*)を提供すると発表した。
この施設はガーダ・ハテム(Ghada Hatem)博士がパリ北部のサン=ドニに設立した「ラ・メゾン・デ・ファム(La Maison Des Femmes)」をモデルにしており、医療だけではなく法律やセラピーなど各分野の専門家が集まった医療・社会的施設だ。ピノー会長は、「サン・ドニの『ラ・メゾン・デ・ファム』は、女性が暴力の連鎖から抜け出し、人生を再構築するための手段として、力を発揮 してきました。政府や他パートナーとの協力のもと、同じような施設をフランス全国に設立し、被害者である子どもたちに対しての配慮もまた必要です」とコメントしている。こうした支援はフランス政府と共同で行う。
女性に対する暴力は深刻な人権侵害であり、時には死につながることもある。内閣府が7月2日に発表したデータによると、日本でのDV相談件数は顕著に増加しており、2020年度の相談件数は19万件にのぼり前年比で1.6倍に増えている。我々もこうした問題に対して目を向けるべきである。女性への暴力根絶を目指すケリング・ファウンデーションの取り組みを今後も注視したい。
*1ユーロ=132円換算(7月2日時点)