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不動産屋に転業する名門子供服メーカーのキムラタン

Feb 15, 2022.三浦彰Tokyo, JP
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キムラタンが手掛ける「ディットマーク」

神戸に本社をおく子供服メーカーのキムラタン(東証一部上場)は、2月14日に「事業ポートフォリオの転換に関するお知らせ」を発表した。

その日の取締役会において抜本的な経営再建と財政基盤の強化を果たすために、現在約220店舗ある実店舗のうち、約210店舗の退店を実行するという内容。この退店により退店店舗の販売員及び本社人員の6割強にあたる40人の整理を行うというのだ。

代わって事業拡大するのが、レゾンディレクション及び同社代表者である清川浩志氏が有する不動産ノウハウを背景にした不動産事業だ。手始めに兵庫県姫路市にある収益物件を取得。さらに全国に収益不動産を所有する和泉商事の全株式を取得して4月1日付で子会社化を決定。

要するに、儲からないアパレルビジネスは止めて不動産会社になるという実にドラスティックな「構造改革」を行うのだ。このレゾンディレクションという会社に乗っ取られて(レゾンディレクションのキムラタン株の保有比率は13.27%)しまった。1925年に木村担(きむらたん)氏が創業したベビー・子供服の名門企業もついに一巻の終わりということだろう。

この清川浩志氏率いるレゾンディレクションは、兵庫県尼崎市に本社をおく企業再生を中心に投資を行う企業を名乗っているが、その実体は不動産業及び物品賃貸業のようだ。その他にも建設業、飲食業、ゴルフ場経営なども手掛けているという。さらに「ギャルソン・ラ・レゾン(garcon la raison)」というブランドでアパレルビジネスも行っており、このあたりがキムラタンとの接点になったのではないか。清川浩志氏は1981年生まれで大阪大学経済学部卒の新進気鋭の実業家というフレコミである。キムラタンの代表取締役には2019年6月に就任。その後は清川氏の言いなりで、これに抗してキムラタンの再建の旗を振る気概のある人物が残念ながらいなかったようだ。キムラタンは6年連続で最終赤字を続けているものの、れっきとした東京証券取引所第一部上場企業である。低金利での融資が受けやすいのかもしれない。この発表があった2月14日の終値は19円。時価総額は26億円である。ちなみに上場を維持するための最低時価総額は10億円である。

2月14日に発表になった第3四半期決算(2021年4月1日〜2021年12月31日)は:
売上高:30億3100万円(−11.6%)
営業利益:−3億6000万円(前年−3億円)
親会社株主に帰属する四半期純利益:−3億8700万円(前年−2億6000万円)
7年連続の最終赤字は避けられそうもない。

不振の上場アパレル企業の乗っ取りとしては、昨年ラピーヌ(東証2部上場)を乗っ取ったフリージア・マクロス(東証2部上場)の例がある。長い業績低迷で士気が衰えた企業を乗っ取るなど赤子の手を捻るようなものと狙ってくるハイエナ企業は今後も現れそうだ。

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