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【WWDジャパン元編集長三浦彰氏特別寄稿】出版不況なんて関係ない大手3社と光文社の苦境

Oct 30, 2020.三浦彰Tokyo, JP
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光文社の『JJ』が2021年2月号(12月23日発売)をもって不定期刊化すると「JJnet」で10月23日発表された。不定期刊行物に広告を出すほど今の業界は甘くないから、簡単に言えば廃刊である。実に1975年の創刊以来45年の歴史に終止符が打たれる。

マガジンハウスと並んで「雑誌の光文社」にとっては、『JJ』はそのファッション誌文化の原点になる女性誌だ。同社の女性週刊誌『女性自身』のファッション版としての出自があるからである。『旗艦誌』とも言える存在であったから、ここ10年ばかりテコ入れがなされて来た。しかし、『CanCam』(小学館)、『ViVi』(講談社)と並んで、「赤文字」三誌と呼ばれた面影は消え失せて、日本雑誌協会の今年4〜6月の平均発行(印刷)部数は4万5200部で、昨年同期比の半分以下だった。実売部数は3万部程度だろう。

光文社の女性誌のラインアップは、『JJ』→『CLASSY』→『VERY』→『STORY』→『美ST』→『mart』の月刊誌に隔月刊の『bis』を加えた7誌体制である。世代別に組み立てられていたが、その最高齢ターゲットの『HERS』は今年7月10日発売の8月号以降は逐次刊行になった。どうも出版業界は未練がましくて、休刊だとか不定期刊行だとか逐次刊行とかいう言葉を常用するが簡単に言えば廃刊なのである。さらに言えば光文社は、これは男性誌だが、2016年6月24日発売の8月号を最後に『Gainer』を廃刊している。『Gainer』と『HERS』は、しようがないにしても、今回の『JJ』廃刊には、光文社の気骨ある社員からは反対の声が上がったはずである。しかし、雑誌の世界でも「ジャーナリズムのある雑誌編集をウリ」にしている光文社で、かなりの回数リニューアルを行って実売が3万部の雑誌というのは、もう手の施しようがなかったということなのか。光文社の現在の雑誌ラインアップの大黒柱は『VERY』だが、このママ雑誌を今日の隆盛に導いた大編集長の今尾朝子氏を起用して『JJ』の立て直しをやらなかったのは、彼女のキャリアにキズが付くと経営陣が判断したからだろうか。

それぐらい光文社は追い込まれている。今年5月の同社の決算は、売上高が185億円で前年比9%の減少、経常損失は14億円にも上った。今期も回復は難しく、ある意味崖っ淵に立たされていると言ってもいいかもしれない。光文社は講談社の100%子会社ではあるが、経営に関しては、「独立」を強調しているが、そろそろ経営に講談社の意向が反映し始めているのではないかという気もしてくる。

その講談社が今年2月20日に発表した昨年11月末決算はこんな内容だ。

売上高:1358億3500万円(前年比12.7%増)
営業利益:89億円(前年より66億円増)
経常利益:112億円(前年より65億円増)
当期利益:72億円(同152.9%増)

野間省伸社長は「21世紀に入って最高の数字」と発言している。

講談社と並んで、出版大手3社と言われる集英社の今年5月決算も見てみよう。

売上高:1529億400万円(前年比14.7%増)
当期利益:209億4000万円(同112.0%増)
営業利益と経常利益は非公表だが、当期利益は実に倍以上になっている。

やはり大手3社のひとつで集英社の50%の株式を保有する親会社である小学館の今年2月決算を見てみると:

売上高:977億4700万円(前年比0.7%増)
経常利益:55億7700万円(同26.8%増)
当期利益:39億2600万円(同11.6%増)
営業利益は非公表だが、売上高は3期連続の増収である。

出版不況などという言葉は、この大手3社に関しては、全く当てはまらないのだ。

講談社では、『進撃の巨人』のロングヒットに加えて、デジタル関連収入が465億円(前年比39.2%増)、国内版権ビジネス81億円(同36.5%増)、海外版権ビジネスが66億円(同0.3%増)、不動産収入31億6000万円(同0.3%増)という内容だった。

集英社に関しては、『鬼滅の刃』の効果が大きい。マンガによるデジタルビジネスや版権(ライツ)ビジネスが不動産収入とともにその業績の下支えをしているのだ。

こうしたマンガコンテンツをもたず、不動産収入もほとんどなく、デジタル化が遅れた中小出版社にとっては、「出版不況」は相変わらず重くのしかかっているということなのだろう。光文社の巻き返しはなるのか、2017年発売の『君はどう生きるのか』のメガヒットで一息ついたと言われる同型の出版社であるマガジンハウスの動向とともに注視したい。

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