大きくは取り上げられなかったが、9月7日付で東証2部上場のアパレルメーカーのラピーヌで、代表取締役相談役の佐々木ベジ氏が代表取締役会長に就任した。この佐々木ベジ氏は、現在ラピーヌ社の最大株主(2020年8月31日現在35.53%保有)であるフリージア・マクロス社の取締役会長である。同社は1991年に佐々木ベジ氏がM&Aした機械製造メーカーで東証2部上場企業だ。代表取締役社長の奥山一寸法師氏は佐々木ベジ氏の実弟である。いずれも父親である奥山治東京都青ヶ島村長の息子で本名である。奥山治氏がマクロビオティックの実践者だったため、「ベジ」という名前になったという。
この佐々木ベジ氏(1955年9月26日生まれ)は、経営難の企業の再生引受人として知られ、シゲムラ建設(地盤改良工事業)、飛松建設(総合建設業)、マツヤハウジング(マンションディベロッパー)、夢みつけ隊プレミアム・ウェディング・バンク(ゲストハウス結婚式場)、安藤鉄工建設(大手鉄工所)、ファーストカルデア(総合建設業)、ピコイドウゴン(断熱設備工事)などなんでもござれ。ファッション分野ではツカモトコーポレーションの株を4.73%保有(2019年9月)するほか、福田春美氏が創業したセレクトショップWRを運営していたホワイトルームの民事再生スポンサーにもなっている。また2017年には「装いの道株式会社」の事業再生スポンサーに就任し、2018年には装道礼法着物学院の学院長に就任している(以上SEVENTIE TWO 5月21日)。
いままで、株式市場でラピーヌ株を買い集めていたようだが、持株比率33%を超えたあたりからいよいよ本格的に経営に参画する意思表明があり、今回のフリージアグループ総帥である佐々木ベジ氏の代表取締役会長就任になったようだ。すでに5月28日付の人事異動では、佐々木ベジ氏が取締役になり社外取締役として佐藤生空氏、羽沢一也氏、奥山一寸法師氏の3氏が就任。9名枠の取締役のうち4名をフリージアグループが占めるようになっていた。
まあ、体の良い乗っ取りとも言うことができるのだが、もう大阪の本社ビルは売却してしまっているし、何かメリットがあるのだろうか。2019年2月期、2020年2月期と赤字が続き、2021年2月期も当然3期連続の赤字は確実だろう。意外に純資産は28億円ほどあるから、これが狙いなのだろうか。なにせ、ラピーヌの時価総額は15億円ほど。フリージア・マクロスが35%を支配したといっても、投資額はせいぜい10億円程度なのである。ついでに株価がなんで600円もするのか不思議な読者がいるだろうが、2015年に10株を1株にする株式併合を行っているためであり、普通の感覚なら60円という起低位株というのが実態なのである。
とにかく、フリージア・マクロスというか佐々木ベジ会長のお手並み拝見である。非常に失礼な言い方だが、旧ラピーヌの経営陣にこのコロナ地獄を生き伸びる力はない。佐々木ベジ会長が、まさか企業解体屋としてラピーヌを切り売りしようなどとは考えていないことを祈りたいものである。1980年代は大阪のプレタポルテメーカーとして、あの「クロード モンタナ」をライセンス生産していた企業である。誰でも良いから企業再生してもらいたいものだが。