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ラグジュアリー3大企業の今後を株価から読む

Feb 26, 2021.橋本雅彦Tokyo, JP
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ラグジュアリーブランドを傘下に持つマルチラグジュアリー企業3社の2020年の決算が出揃ったので株価とともに比較してみた。なおカルティエをメインブランドにするリシュモン・グループについては2020年10月-12月までの第3四半期(3カ月)のものである。為替レートは1ユーロ126円だ。

まず既報したがLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)グループは、売上高は前年比17%減の446億5100万ユーロ(約5兆6266億円)、当期純利益は同34%減の47億200万ユーロ(約5924億円)だった。コロナ・パンデミックの影響はそれなりに受けているが、それがこの程度の影響で済むあたりがファッション業界のナンバーワン企業らしい。同社にとって2020年の最大の出来事はコロナ・パンデミックよりも二転三転した末に買収完了したティファニー社かもしれない。

LVMHに比べれば、その規模は4分の1程度であるが一応その対抗馬であるケリングについては、売上高は前年比17.5%減で131億20万ユーロ(約1兆650億円)、当期純利益は同6.8%減の21億5040万ユーロ(約2709億円)だった。減収幅は16〜18%でLVMHと同程度だが、当期純利益はLVMHに比べて26.8%減と善戦したのが注目される。

ブランド別の減収幅(カッコ内は円ベースの売上高)は「グッチ(GUCCI)」が同-22.7%(9449億円)、「サンローラン(Saint Laurent)」が同-14.8%(2215億円)、「ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)」が同-3.6%(1537億円)でメインブランド「グッチ」の落ち込みが目立った。地域別の減収幅では西欧の-28.5%と日本の-28.9%が突出して目をひいた。

3カ月決算だがリシュモン・グループの第3四半期(10-12月)決算の速報ベースの決算が発表になり、売上高は前年比5%増の41億8600万ユーロ(約5274億3600万円)だった。この3カ月に関してはコロナ・パンデミックの影響がほとんど感じられない。ただし内訳を見てみると、日本を除くアジア太平洋地域の売上高は25%増だったが、なかでもコロナ終息が早かった中国は80%増、台湾は29%増と大伸長した。これに比較してヨーロッパは前年比20%減とまだコロナ・パンデミックの渦中にあることを示した。アイテム別では、特に「カルティエ(Cartier)」や「ヴァン クリーフ&アーペル(Van Cleef&Arpels)」などのジュエリーブランドが好調だった。

注目されるのは、3社の株価だ。昨年3月18日に287.95ユーロの昨年最安値を記録したLVMHは、現在532.80ユーロと史上最高値を更新中だ。リシュモンの10-12月の第3四半期の決算から見て、LVMHの第1四半期(1-3月)のパフォーマンスは、ティファニーの買収効果も期待され相当の回復が期待できるという投資家の読みが入っている。

ケリングについては、現在526.30ユーロ。昨年の3月18日の最安値357.60ユーロに比べて、1.5倍にはなっているものの、LVMHに比べると回復の足取りは鈍い。要因としては主力ブランド「グッチ」の成長にカゲリが出たことが挙げられそうだ。これに代わるスターブランドの登場が期待されるが、それは「ボッテガ・ヴェネタ」ということになるのだろうか。

リシュモン・グループの株価は、昨年の最安値を記録した3月16日の株価は49.40スイスフランだったが、現在は89.38スイスフラン。LVMHと同様に現在史上最高値を更新中だ。評価材料として中国でアリババグループとの戦略的パートナーシップ契約を2018年に締結して以来、中国展開が加速していることが挙げられる。

株価のパフォーマンスに関しては、LVMHとリシュモン・グループは強含みだが、これに比べるとケリングは若干弱含みになっているのが押さえておくポイント。

 

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