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悩めるビッグブランド「ランバン」の親会社が打ち出す新戦略はうまくいくのか? 

Nov 2, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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昨年10月に開催されたアルカンターラ x ランバンコレクションとランバン オン ブルーのコラボレーション企画のランウェイショー

「ランバン(LANVIN)」は悩めるビッグブランドである。1889年にジャンヌ・ランバン(Jeanne Lanvin)がフォーブル・サントノーレ通り22番地に開いた帽子店がその起源だ。ジャンヌが娘のために作ったドレスが評判を呼び、オートクチュールでも成功し、その後婦人・紳士向けの既製服、香水、アクセサリーなどを展開するようになった。その母が娘を抱くブランド・ロゴは今もってその象徴として使われているし、ブランドカラーの上品なブルーは現在も「ランバン・ブルー」として使われている。これほどラグジュアリーブランドとしての十分な資格を持っているのにもかかわらず、21世紀に入ってからの歩みはそうした期待を大きく裏切っている。

まず2001年に赤字続きだった「ランバン」をロレアル・グループから買収したのが台湾の資産家ワン・シャオ・ランだ。残りの25%はスイスの資産家であるラルフ・バルテルが保有することになった。その後2018年に中国のフォースン(復星国際)グループがその株式をワン・シャオ・ランから買収。前述のスイス人資産家のバルテルは引き続きランバン株を保有している。

ワン・シャオ・ラン時代の2001年に「ランバン」のアーティスティック・ディレクターに就任したのがアルベール・エルバス(Alber Elbaz)だ。このエルバスの「ランバン」はパリコレで大評判を呼んだ。新時代のエレガンス表現と評価されランバン社も黒字化した。しかし、オーナーと衝突してエルバスが2015年に退任。その後ブシェラ・ジェラール(2016年〜2017年)、オリヴィエ・ラピドス(2017年〜2018年)、ブルーノ・シアレッリ(2019年1月〜)とアーティスティック・ディレクターも目まぐるしく代わっている。

そうした中で10月に大株主のフォースン・ファッショングループが社名をランバン・グループに変更した。同社はオーストリアの高級レッグウェアブランド「ウォルフォード(WOLFORD)」、イタリアのメンズウェア「カルーゾ(CARUSO)」、アメリカのメンズウェア「セント・ジョン(ST.JOHN)」、イタリアの「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」などのブランドのオーナーである。保有ブランドの中では「ランバン」が最もラグジュアリーブランド的な存在であるから、今回の社名変更もわからないでもない。

さらに、この社名変更に続き、同社は10月に伊藤忠商事や中国のシューズメーカーであるステラ・インターナショナル(STELLA INTERNATIONAL)と戦略的提携関係を締結している。株式割り当てではなく出資及び業務提携ということで、1億5000万ドル(約169億円*)の資金を調達した。ランバン・グループの主要株主は従来通りで中国有数のコングロマリットグループであるフォースン・インターナショナルだ。 ちなみに同社は、リゾート事業として「クラブメッド(CLUB MED)」や「星野リゾートトマム」を保有する上海豫園旅游商城に出資している。

伊藤忠はランバン・グループとライセンス契約して「ランバン・ブルー」「ランバン・コレクション」の婦人服(レリアン)及び紳士服(ジョイックスコーポレーション)、「ランバンスポーツ」(デサント)、婦人靴(モーダクレア)、傘(ムーンバット)のライセンス事業におけるマスターライセンシーになっている。

今回の出資は2004年から続くこのライセンス契約の継続と関係強化が狙いだ。恐らく小売価格規模で日本のライセンス商品の売り上げは年間200億円近くになるのではないか。伊藤忠はポール・スミス社への株式出資で「ポール・スミス(Paul Smith)」のライセンスビジネスを日本で行っているが、今回株式出資はできなかったのか、あるいはしなかったのか。ランバン・グループは2022年春には東京・並木通りに「ランバン」の旗艦店をオープンする予定だという。日本では2019年にランバン ジャパンが解散し、同時に銀座中央通りの旗艦店も同年クローズしていた。今回の旗艦店はインポート商品による品揃えになるだろうが、ライセンス品中心(インポート品は伊藤忠傘下のコロネットが手掛ける)で「ランバン」が展開されている日本で存在意義が主張できるのかどうか。今後はビューティービジネスの本格も予定されているという。いずれも、今回の伊藤忠とステラ・インターナショナルからの出資金が活用されるという。

しかしライセンス中心でビジネスが回っている以上、「ランバン」がラグジュアリーブランドの仲間入りをすることは難しい。また中国企業がオーナーになったヨーロッパの有名ブランドで大きな成功に結びついた例は極めて少ないのも気がかりである。今後ランバン・グループはこうした懸念を打破してニュータイプのブランドビジネスを展開するつもりなのだろうか。大いに注目されるところである。

*1ドル=113円換算(11月2日現在)

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