このことはさりげなく一般マスコミでも紹介されているが、デザイナーのステラ・マッカートニーは、ケリングと50%ずつ保有していたステラ マッカートニー社の株の50%をケリングから2018年に買い戻している。これにより2001年から続いていたケリングとは決別した。そして翌2019年にケリング最大のライバルであるLVMH(モエヘネシー ルイ・ヴィトン)グループとの新たなパートナーシップ契約を結んでいる。ケリングの投資と異なり今回はステラ本人が過半数株式を持つパートナーシップ契約だった。以後、ステラはLVMHのサステナビリティ活動のアドバイザーにもなっている。つまり、「ステラ マッカートニー」ブランドが「マイロ」とパートナーシップ契約を結んだということは、LVMHがキノコ・レザー「マイロ」を認めたということなのである。LVMH、ケリングのラグジュアリー業の2大グループが「マイロ」にかなり入れ込んでいる状況は、彼らの最大の稼ぎ頭であるハンドバッグに使用されるレザー(主にカーフ・スキン)の需給に対する長期的な不安があるのではないかと感じさせる。
キノコ・レザーの最大のメリットとしては、動物なら育成に数年かかるのに、数週間で製造可能である点だ。量的な不安がないと言っていい。ついでに言えば、家畜の呼吸によるに2酸化炭素排出の弊害も、キノコでは劇的にその量が減るし、動物の皮の加工に必要な環境に有害な化学薬品もキノコ・レザーならほとんど必要ない。いいことずくめなのだ。最大の課題は、動物の革が持っているなめらかな質感をどうやったら出せるかということだ。
「エルメス」がOKを出した「シルヴァニア」、そして「アディダス」がスニーカーに使用した「マイロ」が、消費者にどう受け入れられるか多いに注目だ。そして有望であるのが明らかになったキノコ・レザーをめぐるLVMHとケリングの動向も注視したい。思わぬ買収などのニュースが飛び込んでくる可能性もあるということだ。