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ラグジュアリーブランドにとって同族経営とセカンドブランドは是か非か?

May 27, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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「ミッソーニ」の2019AWコレクション

最近イタリアのビッグブランド2つに大きな動きがあった。まず今週「ミッソーニ(Missoni)」のクリエイティブ・ディレクターだったアンジェラ・ミッソーニ(Angela Missoni)が同職を退任し、同社の社長職に専念する。アンジェラの片腕として12年間務めてきたアルベルト・カリーリ(Arberto Caliri)が暫定的な後任になる。そのお披露目は5月31日のバイヤー向けの2022年春夏プレコレクションになる。ランウェイデビューは9月のミラノコレクションになる。これは昨年5月に着任したリヴィオ・プローリ(Livio Proli)CEOのブランド再生計画の一環である。同CEOによる再生計画には、ラグジュアリー強化、洋品を含む商品構成の拡充、EC、サステナビリティ、海外戦略などの課題が上げられている。一言で言えば「ミッソーニ」はラグジュアリーブランドになり損ねたイタリアの有名ブランドである。オッタヴィア・ミッソーニ(Ottavio Missoni)とその妻のロジータによって1953年にイタリアのスムラーゴで創業された「ミッソーニ」は十分にラグジュアリーブランドになるチャンスがあったにもかかわらず、経営をファミリーによって固めたために、そのチャンスを逸したと思われる。その経営が破綻したのは2013年。オッタヴィオとロジータの長男で同族経営の支柱となったヴィットリオ・ミッソーニ(Vittorio Missoni)がベネズエラ沖の航空機事故によって行方不明になったのがきっかけだろう。その後、外部の人間をCEOとして招いて、経営の近代化などを進めようとして来たが大きな成果は上がらなかった。今回、そのクリエーションの改革を進めるにあたって1997年以来24年間クリエイティブ・ディレクターを務めて来たアンジェラ・ミッソーニが退任したことで、後任に誰を据えるかが注目される。すでにミッソーニファミリーは第3世代に入っているが、ラグジュアリーブランドになる条件は十分に備えているにもかかわらず、長引く同族経営の弊害でそうなれなかった歴史をプローリCEOが変えることができるのか大いに注目である。例えば、今年1月に中国支社を開設し、10月に上海に初の旗艦店をオープンする中国戦略などは、その弊害の最たるものだが、コロナ禍を契機にして、まともなブランドに生まれ変われるだろうか。

「ヴァレンティノ(Valentino)」は、ディフュージョンラインである「レッド ヴァレンティノ(Red Valentino)」を2023-24年秋冬コレクションをもって終了し、2024年にはそのブランドビジネスに関する全ての活動を終える。これは同社のヤコポ・ヴェントゥリーニ(Jacopo Venturini)CEOが先週発表した。「われわれの顧客やパートナーたちは日々多くの情報を受け取っている。そうした中で一つのブランドにフォーカスを当てることは長期的なメゾンの成長につながる」とブランド休止の理由を語っている。「レッド ヴァレンティノ」がスタートしたのは2003年。プレタポルテでは「シャネル(Chanel)」と並び最高価格を誇っている「ヴァレンティノ:だが、ヤング層開拓の意味もあって「レッド ヴァレンティノ」はスタートした。爾来21年にわたる展開に終止符を打った。ラグジュアリーブランドにセカンドブランドは要らないという事例になりそうである。もう2012年のブランド廃棄から9年が経過しようとしている「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)のセカンドブランド「D&G」とう前例もある。つまりメインブランドのイメージが拡散してしまうようなセカンドブランドの存在は、ビジネス拡大には一時的に効果があっても長期的な見地から見ればメインブランドにとっては利益は少ないということなのだろう。ラグジュアリーブランドという存在はやはり長期的な視野に立った戦略が求められるということなのだろう。もちろんこれには、「プラダ(Prada)」と「ミュウミュウ(Miu Miu)」のような例外がある。これがなぜ成立しているかに関しては諸説あるが、両ブランドが補完関係にあるというのがベストの解答のような気がしている。まだデザイナーが存命で活躍しているというラグジュアリーブランドという例外にも「プラダ」は該当しているのであるが、少なくとも「プラダ」に関しては、昨年からラフ・シモンズ(Raf Simons)という共同クリエイティブ・ディレクター制を導入している。

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