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三浦彰WWDジャパン元編集長が回顧する2020年その4「サステイナブル」という迷路

Dec 17, 2020.三浦彰Tokyo, JP
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写真提供:スノーピーク

「サステイナブル」が、全産業界において絶対的なテーマになってすでに10年ほど経つ。この5年間ではエコロジーやロハスという「流行語」も「サステイナブル」に統合された観がある。こうした絶対テーマに疑義を申し立てるのは、なかなか至難なことだが、いわゆる「量産効果」(規模の拡大により一品単価が下がり企業の成長性が担保される)をベースに拡大再生産されることを前提にした資本主義において、「サステイナブル」が絶対性をもって立ちはだかるという構図は、実は大いなる矛盾だ。

さらに、トレンドの迅速な変化をベースにして量的な成長をして来たファッション業界にとっては、本来は厄介なテーマであるのは自明であろう。特に量産効果とトレンドの迅速な変化によって急拡大して来た「早い、安い、美味い」(商品提案のスピードが早く、価格が安くて、トレンド提案が十分なされている)をウリにしたファストファッションにとって、「サステイナブル」は成長にブレーキをかける向かい風であるのは言うまでもないだろう。消費者が「サステイナブル」に強く目覚めたならば、ファストファッションの消費は漸減していくはずだ。そうした兆候も一部では見られているようだが、果たしてそれは「サステイナブル」に目覚めた消費者の買い控えによるものだろうか。

ファストファッションばかりではない、「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」「グッチ(GUCCI)」「シャネル(CHANEL)」といった巨大ラグジュアリーブランドが日本円にして1兆円を超えるような規模まで拡大している現在、それはいわゆる「希少なゆえに憧れの存在」というような昔ながらのラグジュアリーの定義から大きくはずれて、ひとつのブランドの在り方に過ぎなくなっているわけで、こうしたブランドにとっても、すでに量産効果を求めた拡大再生産を前提にしている以上、「サステイナブル」という問題はファストファッションと同様に大きな課題になっているはずである。

「我々はすでに『サステイナブル』をテーマにした部署を作り、2030年までに排出温室効果ガスを現在の半分にするプロジェクトをスタートしている」とあるブランドは胸を張るが、それはそのブランドの成長スピードをわずかに鈍らせ、利益の数パーセントを削ることになるが、それを消費者に告知しその購買の罪悪感を逓減する効果に比べたら大した出費ではないのである。抜本的なサステイナブル対策になっているわけではないのだ。たかだかスタートラインに立ち戻った程度のことであろう。やらないよりはマシという程度のことなのである。もっとラディカルな対策こそが求められているわけで、そんなことは現時点では到底無理なはずである。

そうした「サステイナブル」に対する疑問が永解しないままに2020年新型コロナ・パンデミックが全世界を襲い、簡単に言えば「サステイナブル」どころではなくなったというのがファッション業界の本音だったように思う。コロナ・パンデミックは、世界においては当たり前になっていた「成長」「拡大」という概念をとりあえずはストップさせた。だとすれば2020年の戒厳令下で成長している企業や業種・業態を精査すれば未来が見えてくるのかもしれない。

例えば、コロナ禍でもアウトドアライフスタイルが人気だと聞く。ソロ・キャンプ、ゴルフ人口の増加などが話題になっている。いずれも、自然と向き合うというのが共通点になっているようだ。また「健康」というキーワードも内包している。いかにも「消費疲れ」した現代人が向かっている方向性が感じられるのだ。さらに「ワークマンプラス」の好調がコロナ禍でも続いているのに注目したい。いわゆる作業服をカジュアルウェアとして着用するというのは、表面的には「低価格志向もここまで来たか」という側面がある反面、所得による社会の分断に対する抗議の表れでもあるように見えるのだ。そこにはマイルドヤンキーによる富裕層への反逆というテーマがあるように思う。さらに、この30年間ほど続いて来たウェアリングのカジュアル化というベクトルがさらにベーシックという流れに進化していることの表れかもしれない。相も変わらない全世界での「ユニクロ(UNIQLO)」の好調ぶりと合わせ、「着飾る」「モテ狙い」という現代ファッションのべースが大きく崩れてしまったのを痛感するばかりである。

予防ワクチン接種がいよいよ始まり、コロナ・パンデミックに出口がかすかに見えているが、ファッション業界が今のサバイバルを経て、もう一度真剣に「サステイナブル」と向き合う日々が戻って来ることを期待したいものである。

 

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