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森喜朗会長は反面教師!ファッション業界は女性を経営トップに抜擢せよ!

Feb 12, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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PHOTO:Takashi Aoyama / 特派員 Getty Images

このところ女性蔑視発言で世間を騒がせていた森喜朗=東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長(83歳)が辞任することになった。その後任には川淵三郎・同組織委員会評議員兼選手村村長(84歳)が就任することになりそうだ。川淵氏は84歳には見えないし実績は申し分ないものだが、「老害」を云々されていた森氏の後任が1歳年上の川淵氏が選ばれるというのはいかがなものか。2月12日付けの朝日新聞では、川淵氏は森会長から聞いた話では、IOCのバッハ会長が森会長に対し、森会長と並ぶ女性の共同会長を置く案を提案していたと明らかにした。また菅首相からは間接的に「もっと若い人や、女性はいないのか」と言われたようだが、森会長はどちらの案も受け入れず、川淵氏に就任を要請したのだという。困ったものである。

このあたりの人事を見ていると、これはまるで日本のファッション&アパレル業界そっくりではないかと思う。上場している大手企業にはほとんど女性取締役はいないし、相変わらず体育会系の精神論が支配的である。「どんなことがあっても予算は達成するんだ!」という怒号が会社中に轟いている。申し訳程度に女性取締役を誕生させているが、精神風土が改善され、女性経営者が誕生するまでには相当時間がかかりそうで、それまでに会社が持つのかどうか。

話はかなり以前のこと、すでに20年ほど前のことになるが、ある大手アパレル企業の女性デザイナーと会社の外で食事をしていたら、その会社の企画判定会のことを彼女が話してくれた。企画サンプルを着たその会社の女子社員がコの字にテーブルが配置された会議室に入って来て、コの字のテーブルに座った7人ほどの判定メンバーの前に立つらしい。中央には70歳代の社長が座っている。7人の中には女性は2人ほどいるらしい。その企画サンプルの商品化がOKのメンバーは挙手する。圧倒的過半数の場合は問題ないが、拮抗した場合には70歳代の社長が最終決定するのだそうだ。この会社の名誉のために書いておくと、この70歳代社長は、営業マン時代に夜間で文化服装学院に通っていて、パターンが引けるというのが自慢だった。その女性デザイナーは、「あんなジジイたちに自分のデザインを商品化するのかどうか決められるなんて考えるとゾッとする」と話していた。今もこの商品化判定会があるのかどうかは知らないが、こんなことをやっていたら売れるものも売れなくなるであろう。

現在の上場大手アパレルに代わる存在として、東のアダストリア、西のパルグループホールディングスがあげられると思う。従来の上場大手アパレルに比べたら格段に女性は重用されているが、いずれも創業者の権限が強く、経営トップで女性が奮闘しているわけではない。すでに中国系企業ではあるが、バロックジャパンリミテッドやマークスタイラーというギャル系ファッション企業は、女性比率が80%以上だろうが、やはり経営トップは男性である。「経営指標の数字が読めて冷静な経営判断ができる女性は少ない」と現経営者は語るが、そんなことはない。経営指標の判断に要るのは四則演算でそこに微分・積分は要らない。選んだり育てたりしないだけなのだ。選ぶ時にどうしても「女はなあ?」という森喜朗的色メガネで見ているだけなのだ。これには、大失敗した女性経営者抜擢(三洋電機の会長になりその後辞任した元NHKキャスター野中ともよ氏やシャルレ社長になりその後解任された元バレーボール日本代表の三屋裕子氏、大塚家具の大塚久美子氏)の例が強く影響しているようだが、最初の2人については、今から振り返ってもかなりアンラッキーな面があったように思われる。

もう一度、女性の重用&若返りという2大テーマは特にファッション&アパレル業界にとっては、再重要課題のひとづだということを現経営者には肝に命じて欲しい。こうしたことは、経営陣に女性が少ないだけに日々気にかけていないと実行できないことである。また「大抜擢」ということになるから、「保守派」からは大反対もあるだろうが、絶対にクリアしなければならない課題だ。

あの女性デザイナーの「あのジジイたちに私のデザインの商品化の成否が決められるなんてゾッとする」という声が今でも私は忘れられない。

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