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なぜオンワードは海外で成功できなかったのか?

Dec 22, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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オンワードホールディングス(HD)が連結子会社のオンワードイタリアが保有するオンワードラグジュアリーグループ(OLG)の全株式を12月11日に売却した。この株式売却によりOLGはオンワードHDの連結子会社から除外された。

繊研新聞が12月15日に報じた記事によれば経営陣を中心にしたMBO(マネジメントバイアウト)だという。他の報道では売却先はイタリアの投資会社のNEMO S.R.Lになっている。売却金額は未公表だ。

OLGはその前身はアパレルメーカーのジボ(GIBO)社で、これに靴メーカーのイリスが加わっている。現在のCEOはファビオ・ドゥッチ(Fabio Ducci)で、就任は2019年1月。イタリアファッション界では「顔役」だったフランコ・ペネ会長を2018年5月から引き継いでいた白石丈宏・会長をドゥッチは引き継いでいた。ドゥッチは2015年からOLGのシューズ部門の責任者を務めていた人物だ。

OLGは、アパレルのジボと靴のイリスを持っているのが強味で、ヨーロッパのラグジュアリーブランドの生産も担っていたが、赤字が続いていた。今年のコロナ・パンデミックでさらに打撃を受け、売却は止むを得ないという判断が下されたのだろう。もうメンツがどうこうという段階ではないのだろう。

無名時代のジャンポール・ゴルチエ(Jean-Paul GAULTIER)を支援し、バスストップというセレクトショップを展開し、マイケル・コース社の株を保有し、グローバルブランド「ICB」を全世界で販売したがその初代デザイナーはマイケル・コース(Michael Kors)だった。「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」と契約する前のマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)に金を出してタニマチをやっていたのもオンワード樫山だった。そしてイタリアでは、「ジル・サンダー(Jil Sander)」ブランドを買収し、ジボ社を買収することでヨーロッパのラグジュアリーブランド、デザイナーブランドとのコネクションを深めていった。この他にも海外で築いて来たネットワークと使った金を記すのには紙数が足りない。

こうして「カシヤマ」という名前は、「CI」(伊藤忠商事)や「MITSI」(三井物産)と並ぶビッグネームになった。日本で稼いで、そのうちの何分の一かを海外で投資する。「海外で儲けなくてもいい」という不文律でもあるのかと思うほど、うまくいかなかった。なぜなのだろうか。それが問題だ。考えてみて欲しい。「ユニクロ(UNIQLO)」にあって、オンワードになかったものは何なのか?

その最大の原因は、本当の意味でのグローバル・スピリットがオンワードHDには無かったということなのである。オンワードが海外で築いたネットワークは、日本という市場でのビジネスがうまくいくためのものだったのである。「海外ではうまくいかなくてもいい」という甘えが、海外事業を担当した社員たちに欠けていたのではないか。「そんなことはない」という反論が聞こえてきそうだが、本社を日本橋ではなく、パリかニューヨークに置くぐらいの覚悟はなかったはずである。日本の百貨店市場を制したお山の大将では、やはり欧米では通用しなかったということなのだろう。

もう海外で何かやる余裕は全くなくなった。「ジル・サンダー」の売却も時間の問題になっている。レンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)率いるOTBグループ(「ディーゼル」「メゾン・マルジェラ」などを傘下におく)が有力だと言われている。買い叩かれなければよいが。

 

 

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