オンワード樫山は、保有している「オンワード樫山芝浦第2ビル」(東京都港区海岸3-11-6、敷地面積2368.3㎡、建物総床面積1万2385.1㎡)を78億円で住友不動産に売却する。これによりオンワード樫山の親会社であるオンワードホールディングス(以下オンワードHD)は、2021年2月期に58億円の固定資産売却益を計上する。引き渡しは2021年1月29日を予定。オンワード樫山は、同ビルを倉庫・物流センターとして入居していたが、住友不動産に引き渡し後もテナントとして当面は入居する予定だという。オンワード樫山は、この海岸地区に4つのビルを保有してきた。芝浦第1ビルはリニューアルを行なってオンワードベイパークビルと名前を変え、企画・生産・営業が集結している。第2、第3、第4は基本的には倉庫・物流として使用されているようだ。第2ビルにはかつて関東支店が入居していたが、関東支店は東京本店に吸収されているので、今回の売却も肯ける。
さらに不動産に関する驚くべき情報がある。オンワードHDは、2019年4月2日に新業態「カシヤマ ダイカンヤマ(KASHIYAMA DAIKANYAMA)」を渋谷区代官山にオープンしていた。地下1階から5階までの全6フロアで、カルチャーやアートを発信するギャラリー、キュレーション型セレクトショップ、レストランやカフェ、バーが展開され、五感を刺激しながらも憩いの場になるような空間を目指していた。プロジェクトリーダーはオンワードHDの廣内武名誉会長(当時代表取締役会長)。これがなんと賃貸物件になって募集が行われているというのだ。それによると対象は1階〜3階までの3フロア。しかし相談次第では地下1階、4階、5階も含めた一棟借りも可能だという。
ニューライフスタイルを目指したオンワードHDの牙城としてオープンした館があっけなく賃貸物件になってしまったというのだ。芝浦第2ビルの今回の売却も含めて、「落日のオンワード」を強く感じさせる話である。
オンワードは余資で不動産を銀座、新宿、代官山などでかなり買っていた時期がある。不動産事業を本格化させようという考えもあったようで、日本橋本社も建て替えて高層化(17階)して、上層階は賃貸していた。このオンワードパークビルディングの完成が2014年11月。これから6年、まさかこんな苦境に立たされるとは思いもよらなかったはずである。ここは業界の最大手として臥薪嘗胆して、捲土重来を期してもらいたいものだ。