BUSINESS NEWS
  • share with weibo
  • share with LINE
  • share with mail

三越伊勢丹HDの杉江社長が退任を決めた意外な理由とは?

Mar 2, 2021.三浦彰Tokyo, JP
VIEW292
  • share with weibo
  • share with LINE
  • share with mail

三越伊勢丹ホールディングスのトップが杉江俊彦社長(60歳)からその子会社の岩田屋三越の細谷敏幸社長(56歳)に4月1日で交代する。2017年2月にクーデターの形で大西洋社長が辞任して杉江体制になってちょうど4年間。ぴったり2期4年ではあるが、ちょっと短い感もあり、「え、またクーデターか」と色めきだったが、この人事はどうも、杉江社長主導で進められた「禅譲」人事のようだ。新社長の細谷氏と杉江氏は4歳違いで、杉江氏はこの年格好の後継者候補をリストアップしていたようだ。

三越伊勢丹HD内でコストカッターとして恐れられていた杉江社長だが、社長交代の記者会見では「改革は一定のメドが立った」と振り返っている。しかし、コロナ禍という特殊な条件も手伝っているが、業績は浮上しなかった。そうした中で、「杉江氏の社長退任を決定付けたのは、株価だろう」と一刀両断する同社OBの証言がある。上場会社の社長ならまず1日に5回は、デスク上のパソコンで自分の会社の株価を確認するぐらい自社の株価には敏感だと言われている。現在の大手百貨店の株価を3月1日の終値で見てみると(カッコ内は3月1日の時価総額。1億円以下切り捨て):
1 松屋:3610円(690億円)
2 近鉄百貨店:3330円(1330億円)
3 高島屋:1094円(1074億円)
4 J.フロントリテイリング:1006円(2721億円)
5 エイチ・ツー・オー リテイリング:858円(1077億円)
6 三越伊勢丹ホールディングス:776円(3091億円)

1位の松屋と2位の近鉄百貨店は比較対象としてふさわしくないかもしれないが、いわゆる4大百貨店グループの中で三越伊勢丹HDの株価は最下位に甘んじているのだ。時価総額こそなんとかトップの座は死守しているものの、これは発行株式数の多さに起因している。これも株価の推移によっては、J.フロントリテイリングに抜かれる水準に来ている。

杉江社長が4月1日に社長就任した2017年には、3月3日に1436円(終値)という同年最高値があったのだが、その後の4年間でこれを終値ベースでクリアしたことは一度もない。昨2020年7月31日には480円というこの4年間での最安値を記録している。現在はその底値圏からは脱しているものの、杉江社長のクーデターが起きた頃に比べれば半値という水準だ。これを見れば、OBから「株価が安い」と言われる以前に「そろそろ退任の潮時」と杉江社長が自覚するのも肯けるのである。その企業のことを最も冷静にかつ正確に判断している恐い存在は株を売買している投資家なのである。

百貨店のような本来は世の中の流れに敏感でなければならない業種の社長職というのは2期4年程度が任期としては十分だと思う。その4年間に全力投球するというのが本筋だと思う。今回の社長交代はそうした見地から見れば好ましいものだ。細谷新社長には奮闘していただいて、株価を引き上げて欲しいものである。

READ MORE