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そんなこと、あなたの会社がやることですか?

Sep 22, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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ロン ハーマンのサステナビリティ・ビジョン

「餅は餅屋」という諺がある。「やっぱり餅屋がついた餅が一番うまかった」という故事から来た諺のようだ。まあ、「蛇の道は蛇」なんていうのもあるが、これは同じ意味でもちょっと悪いニュアンスがあるようだ。

ファッション&アパレルビジネスの退潮基調は今回の新型コロナウイルスの思わぬ跳梁跋扈でさらに深まりつつあるように感じる。そうした中で、もう「餅は餅屋」なんて悠長なことを言っていられないという動きが最近出ているので紹介しておこう。
 
まず、アダストリアが8月27日から始めた「アダストリア・ライフスタイル・クリエイション」というビジネスだ。マルチブランド、マルチカテゴリーで事業展開してきた同社が相手にするのは消費者ではなく企業。空間プロデュースやプロダクトプロデュースなど同社が持つノウハウとネットワークを惜しげもなく協業企業に伝授するというB to Bビジネスである。今まで同社が培ってきたノウハウに余程自信があるようだ。ポイントという旧社名時代から同社は様々な危機を乗り越えてきた。企画機能を持たない仕入型SPAから本格的なSPA企業への転換も、「ニコアンド(niko and ...)」で挑戦した大型のライフスタイルショップも成功を収めた。「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」で一発当てた水戸の福田屋洋服店はいまや年商2200億円を誇るグローバルなファッション企業に成長した。国内1400店舗、海外70店舗以上に驚くのが2019年12月に会員登録者数1000万人を突破した自社サイト「.st(ドットエスティ)」だろう。これこそ今回アダストリアがB to B に乗り出すことになった自信の源ではないかと思う。「他社のビジネスをヘルプ、アドバイスする暇があるなら、自分の会社のことをちゃんとやったらどうだ!」という声は完全に封じているのではないだろうか。

今回BtoB事業を立ち上げる前にすでにいくつかの成功事例があった。例えば、日鉄興和不動産初の試みとなる学生マンション事業に対して、そのラウンジやエントランスなど居室内のインテリアと空間をプロデュースしたのは「ニコアンド」だった。また、同社の「グローバルワーク」は西武ライオンズの球場スタッフユニフォームのプロデュースを行なっていた。今後このB to Bビジネスがどんな成果を生むのか大いに楽しみである。同業のアパレルメーカーから「ブランドリニューアル」の相談を受けるなんて笑えないこともあるかもしれない。
 
もうひとつのアッと驚くファッション企業の新規事業はサザビーリーグが千葉県匝瑳(そうさ)市に新設し10月15日から稼働を開始する「ロンハーマン匝瑳店」だ。これは5月末に同社のロンハーマン事業部が発表したサステナビリティ・ビジョン「2030年までにロンハーマン事業部のCO2排出量実質ゼロ」の実現に向けた取り組みのひとつだ。「ロンハーマン匝瑳市店」はソーラーシェアリング施設の太陽光発電で電力を作り、これをロンハーマンの店に供給し使用する他に、このソーラーシェアリングパネルの下では有機農業を行うというプロジェクトだ。この有機農業もCO2削減には効果があるという。ロンハーマン事業部の社員が実際に有機農業をするわけではないが、市民エネルギーちば(株)、匝瑳市の地元農家との緊密なコラボによって展開される。どういう経緯があってこのプロジェクトがスタートしたのかは定かではないが、大胆不敵にして機を見るに敏な同社らしい動きだ。採算が合うようならば一気に電力事業や有機農業への参入もあるかもしれない。儲かることに垣根を設けないのがサザビーリーク流だ。「これは、あなたの会社がやることですか?」なんてことを言っている時代ではないのだ。思い立ったらまず動いてみる。ましてやそれがサステナブルなら躊躇なしであろう。
 
今から30年前、世界のカジュアル市場を席捲した「ベネトン(BENETTON)」というブランドがあった。もちろんブランドは続いているが、今ではその名前を知る者は少なくなった。今では投資事業がメインになり、高速道路のサービスエリアでの飲食チェーンの「オートグリル」を経営し、アリタリア航空の大株主として知られる。アパレルというビジネスは基本的には流行り廃れの激しいビジネスであり、儲けたら次のビジネスを考えていないといつの間にかニッチもサッチも行かなくなっているのだ。以前では考えられないような2社のビジネスを紹介したが、この2社の動きの速さを見習って欲しいものだ。

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