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三陽商会を救えるのはどの会社だ!?

Feb 14, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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シカゴに本社をおくRMBキャピタル(以下RMB)が、三陽商会に対して昨年12月に「三陽商会は戦略的パートナーへの身売りを検討すべき」という株主提案を行なっていたことが米ブルームバーグによる報道で明らかになった。RMBは三陽商会の株式を総株数の5%以上保有しているという。

4期連続最終赤字の計上を見込む同社に対してRMBは、リストラの継続による有能な社員の退社やモチベーションの低下を憂い、販売チャネルを百貨店からEコマースへ移行する改革が同社の資本力では難しいと分析。同社の持っている高品質なアパレル製品を生み出し販売する従業員という最大の資産がなくなると見るRMBは、投資銀行をアドバイザーに選び、より資本力のある戦略的パートナーの傘下に入ることが最善の策であるとしている。このニュースが日本のマスコミで報じられると三陽商会は一時前日比17%の値上がりをみせた。

全く同感である。RMBははっきりと語ってはいないのだが、今の経営陣が舵取りをしていてはこの会社は5年後には会社更生法なり民事再生法を申請することになりかねないのである。そして自力での再生も難しいのである。全くもってRMBと同意見なのだが、問題は買収する余資があり、かつ三陽商会を傘下においてシナジー効果を期待できるような企業が日本中を見回してあるのだろうかということだ。RMBは自分たちが買収をやって再生を自ら手掛けましょうとは言っていない。「投資銀行等をアドバイザーに選定し」と提案にはあるが、具体的には自分たちもアドバイザーならやってもいいよと言っている気配がある。さてその先である。まず同業の総合アパレルと呼ばれる企業は、そのほとんどが死にそうな状況にありとてもそんなモノ好きなことをするわけはない。唯一ワールドがその余資を持っていると言えるが、M&Aの方向が「次の業態」を常に考えていて、旧業態の三陽商会に食指を伸ばすとは考えづらい。

続いて、三陽商会の大株主でもある三井物産。ポール・スチュアート社を三陽商会のために買収したり、いろいろと面倒は見て来ているし、実際過去には社長を派遣(田中和夫氏)したりしたこともある。だが、傘下企業にするメリットはあるのか。商社のアパレルメーカー買収は、伊藤忠商事のジョイックスコーポレーション、ロイネ、レリアン、エドウインなどがある。買ったはいいが、投資会社のエンデバー・ユナイテッドに安値で売ったジャヴァホールディングス(2018年)や解散したライカ(2011年)など手痛い失敗もある。三井物産としてもできれば手を出したくない案件だろう。

となると、買い手は?ということになるが、レナウン、バロックジャパンリミテッド、マークスタイラーなどを買った中国のアパレル企業が登場してきそうだ。

今の三陽商会の時価総額は183億円(2月13日/株価1403円)。51%の取得でも90億円以上の金が必要だ。4年連続最終赤字が確定的で特筆すべきブランドがあるわけでもないアパレルメーカーに90億円払う会社が、中国企業でもあるのか?前出のレナウン、バロックジャパンリミテッド、マークスタイラーについてもうまく行って儲かったという例ではないだけにどうなのだろうか。

旧大手アパレル企業の再生はなかなか難しく難易度が高い。ワールドの再生を成功させた上山健二・社長は住友銀行からジャック(中古車販売)、長崎屋、GABA(英会話)ぐるなびなどを経験してワールド入りした人物である。ワールドをいわゆる大手アパレル企業とは捉えていないはずで、そうした目で再生に取り組める人物でないとなかなか三陽商会の再生は難しそうだ。

今回のRMBによる提案はもしかしたら最後のチャンスという気もしてくるが、こうした火中の栗を拾う志のある人物や企業が出てくるのだろうか。

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