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三陽商会よ、プライム市場じゃなきゃいけないのですか?

Nov 30, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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三陽商会(PHOTO:SEVENTIE TWO)

来年4月4日(月)から東京証券取引所の市場が再編される。現在の東証一部・東証二部・ジャスダック・マザーズという4市場がプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編されるのだ。現在の4市場は東証一部(大企業)約2200社、東証二部(中堅企業)約470社、ジャスダック(中小企業)約370社という区分になっている。どう考えても東証一部の社数が多すぎてイビツな構造になっていたのだ。またかつての隆盛企業もその後衰退し「東証一部上場」がふさわしくない企業がかなり存在していたのである。今回これを見直して、分かりやすい市場の格付けを行い、投資しやすい(とくに海外資本にとって)市場環境を提供しようということらしい。

当然再編後の「プライム市場上場」には、現在の「東証一部上場」よりも価値がある。またそれだけ厳しい上場維持基準が課されるのだ。その条件は、流通株式数2万単位(1単位が100株のため200万株)、流通株式数が上場株式数の35%。流通株式時価総額100億円以上、1日平均売買代金2000万円以上。このため現在約2200社の東証一部上場企業のうちプライム市場にすんなり移行できるのは約1500社で、残りの約700社はスタンダード上場になる。とくに問題なのは、流通株比率と時価総額のようだ。しかし、改善のための報告書を開示すると、当面(改善期間は1年)プライム市場に残ることができる措置がとられる。特に現在東証一部上場のファッション&アパレル関連企業は、かつての隆盛企業が多く、現在は斜陽化・衰退している場合が多く、プライム市場に移行できない企業が少なくない。

そうした中、現在東証一部上場の三陽商会は11月26日の取締役会でプライム市場への移行を目指す決議を行い、改善報告書を東京証券取引所に提出する。上記上場維持基準の中で、三陽商会が満たしていないのは時価総額だ。時価総額とは、株価×流通株式総数のことである。株価が上がらなければ時価総額は増えようがない。上場維持基準の時価総額100億円になるためには、現在の流通株式数では株価が1036円以上でなければならない。現在の株価は820円(11月29日終値)。このところの株価の下落でかなり厳しい水準にある。

このため同社は株価を上げるために、2020年4月公募の「再生プラン」(2021年2月期〜2022年2月期)に沿って黒字化を達成し、2022年4月公表予定の「新・中期経営計画」の実行で中長期的な企業価値の向上を実現するとしている。さらにIR(企業広報)機能の強化も進めるという。

バーバリー社とのライセンス契約が2015年に終了した後、バーバリー関連商品が半分以上を占めていた同社の業績は急激に悪化し、2016年12月期、2017年12月期、2018年12月期、2020年2月期(決算期変更のため14カ月変則決算)、2021年2月期と5年間赤字決算を続けて来た。仮に今後株価が上昇して時価総額100億円を超えてプライム上場維持基準を満たしたとしても、その設立趣旨からいえば、三陽商会はプライム市場銘柄にはふさわしくない。同社では「プライム市場への移行は持続的成長と企業価値向上を実現する上で非常に重要」としているが、メンツやプライドが感じられる。ここは、自分たちの置かれている立場をわきまえて、東証一部銘柄から撤退してスタンダード市場で捲土重来を期すのが正道ではないのだろうか。

メンツやプライドにこだわるよりも、2022年2月期の黒字化が絶対の急務であろう。6年連続赤字という不名誉な記録は避けなければならない。決算まであと3カ月ある。正念場であることをもう一度肝に命じてほしい。

 

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