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ストライプ、ZOZOのモラルハザードを反面教師に

Mar 12, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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左から、ストライプの石川康晴・前社長とZOZOの前澤友作・前社長(Photo:SEVENTIE TWO)

ストライプインターナショナルの創業社長である石川康晴氏は3月6日の臨時取締役会で一連のセクハラ報道を理由に辞任の申し出を行い受理され、辞任した。一時は「2018年の臨時査問会ではセクハラは認定されず、処分もなかった」と同社がコメントを出すなど、「逃げ切り」を画したフシがあったが、特にSNS上での批判や暴露発言が過熱し、これに抵抗するのは企業やブランドにとって不利益という判断があったようだ。マスコミはセクハラの続報などをしたものの「辞任すべき」の報道がなかったのには驚いた。経営者のモラルを追及できなくてはジャーナリズムの名が廃る。石川前社長のセクハラはかなり悪質なもので、一般の株主に対しても責任のある上場会社なら「一発退場」である。同社の約40%の株を持つ創業社長だけにその権限は絶対だったのだろうが、社員に対してセクハラは経営者としては第一級のモラルハザードであり、性行為は犯罪であろう。石川氏は、向学心からなのか学歴コンプレックスなのか、岡山大学経済学部経済学科の夜間コースを卒業し京都大学大学院でMBAを取得。一体、何を勉強したのか。石川前社長が学ぶべきは人の道、経営者のモラルだったようだ。

ストライプインターナショナルの石川康晴・前社長以上にファッション業界にとって大きな存在だったのがZOZOの創業者の前澤友作・同社前社長だ。こちらはレッキとした東証一部上場企業だった。経営上の失敗と私生活の乱脈などで批判にさらされた末に、会社をZホールディングス(旧社名ヤフー)に売却した。売却するのと同時に社長も辞めて、会社を去った。売却はZOZOの将来を見据えた上での決断だったと前澤氏は自身のブログでZホールディングスへのTOBが無事成立した昨年11月に書いている。だが、そうだろうか。前澤氏は、石川氏とは違って独身であるから、タレントとの恋愛や元社員と推定される女性との間に子供を3人設けて養育費を支払っているということを堂々とブログに書いている。しかしこうした自由奔放な前澤氏の私生活が徐々に世の批判の対象になっていった。「私は独身だし、やりたいように生きるだけだ」という前澤氏の論理は、次第次第に彼を追い込んで行ったはずだ。社内の前澤信奉者たちからも、そのあまりのモラルハザードぶりに離れていった社員も多かったはずだ。そして、問題なのは彼の自由な生き方を保証するための資金。前澤氏はその資金を自分が持っているZOZO社株のかなりを担保にして、数行の銀行から調達していた。ZOZO株の株価が下がると担保不足から最終局面ではそのほとんどを担保にするしかないような状況に追い込まれていたようだ。そこに現れたがZOZOを次のステージにアップしてくれるヤフー(Zホールディングス)だったわけで、推測するに前澤氏にとってはむしろこの担保にしている株をTOBで高価格で引き取ってくれることの方が有難かったはずである。しかし、どうなのだろうか。自分の自社株を担保にして銀行から金を借りて好き放題な私生活を送っている経営者というのは。「経営者失格」なのではないか。自分からどんどん離れていく社内の信奉者の白眼視も前澤氏を追い込んだはずである。もう社長を辞めるしか、前澤氏に道はなかったのである。第一級とは言わないが上場会社である以上、これは第二級のモラルハザードと言っていいだろう。

45歳の石川康晴、44歳の前澤友作の二人は、モラルハザードで社長を辞めて人生の第1章を終わったが、彼等の倫理観に大幅な改善がない限り彼等に経営者としての第2章はないだろう。30歳代、40歳代で成功したベンチャー企業の創業社長たちにとって、この2人が良き反面教師になってほしいものだ。

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