・営業利益1億9300万円(同-70.8%)
・経常利益2億5700万円(同-59.4%)
・当期利益1億8400万円(同-65.6%)
とコロナ禍の影響をモロに受けた減収減益決算だった。赤字にならないのは評価できるが、上場をにらんでかなり無理をした結果とも思える。いずれにしても90億円の売上高で営業利益が約2億円というのは超低空飛行である。よく上場できたなあという水準である。
ところが、9月13日(月曜日)に発表された上場後初の2021年7月末決算は:
・売上高83億2600万円(前年比-7.7%)
・営業利益3億900万円(同+59.6%)
・経常利益3億1900万円(同+24.4%)
・当期利益2億4400万円(同+32.2%)
減収ながら大きく改善された。これを受けて株価は翌日の9月14日(火曜日)から猛反発して終値は1567円と前日比125円高。15日の終値は1606円、16日終値は1605円、そして9月17日はなんとストップ高の400円高で2005円の史上最高値をマークしている。
これには、1600円の公開株を買った投資家、上場初値を買ってしまった投資家も胸を撫でおろしていると思う。タンゴヤの1株当たりの当期純利益は185円だからまだその11倍程度だ。日本の上場企業の平均PERは15倍程度だからまだタンゴヤの株価は安いとも言える。
しかし私にはオーダースーツの専門店チェーンというカテゴリーに大きな可能性があるとも思えないし、このまま株価が平均理論値の3000円近くまで上昇するとはとても思えない。
タンゴヤの田城弘志社長(GSマネジメントと共同保有する株式比率は全体の39.28%で最大株主)は上場後の記者会見で、「この12年ほど行ってきた事業構造改革で事業内容は大きく変わった。ファッション性を強く押し出し、インターネット広告でスマートフォンにコマーシャルを入れ、オーダースーツを若い人に利用してもらおうとしてきた。その事業が中心なので、当社は第2の創業を果たした」と胸を張っている。
田城社長は、先ごろ業績不振のためMBOで東証一部上場を廃止したオーダー紳士服チェーンのオンリーが2005年に大証ヘラクレスに上場した際の担当役員だった。紳士服市場やオーダー市場の厳しさをよく知る人物である。2005年から16年が経過してスーツ市場は年間2000億円を切る水準になった。ちょうど半分になったことになるが、下げ止まっているわけではなく、減少傾向に歯止めがかかるとは思えない。タンゴヤがこの市場で生き残るのは正直簡単ではない。
今春には、「ワークマンプラス」が爆走中のワークマンが上下4800円のスーツを販売。生産した15万着は即完売。秋にはビジネス電熱ヒーター付きジャケットなども合わせ年間100万着の生産体制で本格的にスーツ市場に殴り込みをかける。また「ユニクロ(UNIQLO)」は2016年から約2万5000円のセミオーダースーツを開始してジワジワと市場に食い込んでいる。
果たして、縮小を続けるのにこうした強力なチャレンジャーが出現しているマーケットでタンゴヤは生き残れるのだろうか?
とても株を買う気にはなれないのだが、タンゴヤ株を買う人が殺到するからストップ高になる。株式市場というのは面白いものである。