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Japan|栄華をきわめたブランドたちの哀しい末路

Aug 9, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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ワールド公式ホームページより

8月5日、ワールドは第1四半期決算発表と同時に2021年3月期の赤字転落を予想すると同時に、5ブランドの廃止とともに計358店舗の閉店、200人の希望退職者を募集すると発表した。なかなかショッキングな内容だが、こんなことではもう驚かなくなったから、「慣れ」というのは恐ろしいものである。人間というのはすぐ環境に順応する生き物である。

この廃棄される5ブランドの中に「オゾック(OZOC)」があったのには驚いた。一世を風靡したフレンチカジュアルブランドである。1992年にフランス帰りの田山淳朗と契約して、ワールドの躍進のキーブランドになった。ピーク時300億円ぐらいは売っていたはずだ。90年代前半の日本はフレンチカジュアルブームで、「アニエスベー(agnes b.)」もあったし、和製フレンチカジュアルの「ナイスクラップ(NICE CLAUP)」が登場して、こちらは平成カジュアルの代表格と呼ばれるようになった。田山はその後「オゾックのお姉さん版」の「インディヴィ(INDIVI)」、メンズ版の「ボイコット(BOYCOTT)」などをスタートさせた。田山は2004年とワールドとの契約を終了し、「オゾック」の後任デザイナーにはチダコウイチが就任した。

この辺りのフレンチカジュアルブーム、平成カジュアルブームが一段落すると、渋谷109を拠点にしたギャルファッションが2000年あたりに台頭してくる。芸能界でいうと、浜崎あゆみと安室奈美恵がファッションリーダーになった。「白の浜崎(白肌)、黒の安室(黒肌)」なんてキャッチフレーズがあったと記憶するが、2人はさまざまなブランドのイメージガールとして起用されていたが、代表的なブランドとなると浜崎なら「セシルマクビー(CECIL McBEE)」、安室なら「バーバリー ブルーレーベル(BURBERRY BLUE LABEL)」ということになる。この2つのブランドも爆発的に売れた。渋谷109が280億円の史上最高売上高を達成したのは2008年。それから2015年には161億円と6ガケまで落ち込んだのだから、マルキューブームを支えた「セシルマクビー」「マウジー(MOUSSY)」「エゴイスト(EGOIST)」などのビッグブランドもピークを過ぎて6ガケ程度になっていたはずだ。そうした中でマルキューの女王として2000年から2013年まで同館の売り上げナンバーワンの座に君臨していたのが「セシルマクビー」だ。2009年1月期の売上高は226億700万円。これがピークの売り上げではないだろうか。

そのギャルファッションの女王がなんと、年内にはその全43店を閉鎖するのだ。今後はライセンス事業として継続するという。そのニュースを伝えたTVの若い女性への街頭インタビューを見ると、その圧倒的知名度がいまもって健在なだけになぜ急激に売れなくなったのか。要するに売り過ぎたのである。

90年代の「オゾック」、2000年代の「セシルマクビー」とまさにその時代のチャンピオンがこのコロナ禍の時代に全店を閉鎖するというのは象徴的な出来事だ。こういう「流行り」のブランドには寿命があるということなのだろう。ある意味「太く短く」ということなのかもしれない。「セシルマクビー」の後に、アパレル市場で爆発的に人気になって200〜300億円規模になったブランドがあるのかというと実に心もとない。まさか「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」がそれだというわけにもいかないだろうが(笑)。

もう「オゾック」「セシルマクビー」タイプのファッションブランドの流行というのはもう起こらないような気がするのである。

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