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サザビーリーグが勝ち続ける3つのキーワード

Jun 11, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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サザビーリーグ(The SAZABY LEAGUE、以下SL)が米国ロサンゼルス本拠のセレクトショップ「ロンハーマン(Ron Herman)」の事業を2月7日付で買い取っていたことが明らかになった。SLは2009年に米本社とライセンス契約を結び、第1号店を千駄ヶ谷にオープン。現在12店舗を展開。2013年には日本独自の「RHC ロンハーマン(RHC Ron Herman)」を開業し、第1号店をマークイズみなとみらいにオープンし、現在7店舗を構える。17年には、日本での商標権を取得して、ライセンス契約から同社の運営に切り替わっていた。

ちょうど10年前に結ばれた契約で、今回契約更改にあたっていたようで、恐らくサザビー側から事業買い取りの提案がなされたのではないだろうか。SLという企業はそういう企業である。相手が誰であろうとも「先手必勝」で必ず自分のペースで交渉を進めていく。2014年、スターバックスがSLに任せていた日本でのスターバックス事業を、本国100%出資のスターバックス・ジャパンに移管するときも、きちんと「落とし前」として出資の株式39.52%を当時の市場価格の500億円で買い取らせたのは記憶に新しい。「せっかく育てた」ブランドを、本国の日本法人設立で「持っていかれる」ケースばかりの日本のインポーターやアパレル企業とは、契約に対する考え方が一味違う。このあたりは創業前に欧米を3年ほど「放浪」した鈴木陸三氏のちょっと風変わりな経歴に拠るところが大きいとは思う。

「せっかく育てた」ブランドを日本法人設立で「持っていかれる」ケースは、SLでもなかったわけではない。社名がサザビー時代にアパレル、雑貨を手掛けていた「アニエスベー(agnes b.)」をやはり手放したこともある。しかしこれは雑貨デザインノウハウを自社の「サザビー」ですでに吸収していた。「転んでもタダでは起きない」精神である。

また、バーニーズ・ジャパン(Barneys Japan)退職者が始めたセレクトショップ「エストネーション(ESTNATION)」に出資して、長い苦闘の末になんとかモノにした際も、その粘り強い執念は業界を驚かせた。始めたからには絶対にモノにする「執念」というのも、SLのもうひとつの特徴である。

書き忘れたが、儲かるビジネスを嗅ぎつける恐るべき「嗅覚」については言うまでもないだろう。元社員に聞くと、SLにおける会議というのは、すなわち「新規事業提案」の会議。提案された新規事業の可能性についての徹底した議論がなされるらしい。「あれだけ徹底した会議を経て立ち上がるのだから、失敗するのは難しい」という。

本国の「ロンハーマン」は、米国では3店舗が展開されているだけの事業である。それもそもそもは、セレブセレクトショップ「フレッド シーガル(FRED SEGAL)」でコーナー展開されていたものが、独立してショップ化したものである。本家「フレッド シーガル」の方ではなくて分家(ロン・ハーマン(Ron Herman)氏は「フレッド シーガル」のバイヤーであり、フレッド・シーガル(Fred Segal)氏とは親戚関係にあるらしい)の「ロンハーマン」に目をつけて大成功するあたりがいかにもSLらしい。本家の「フレッド シーガル」はそれに遅れて日本進出したが、散々の結果なのは周知の通り。

SLの成功を支える3つのキーワード「転んでもタダでは起きない」「執念」「嗅覚」を述べてきたが、日本での「ロンハーマン」ビジネスは一時の急成長時代は終わり、安定成長の時代に入った。事業を買った以上、アジア、欧米への展開も期待されるが、海外展開について、従来SLはそれほど積極的ではない。どんな海外展開を考えているのか、次の一手に注目が集まる。

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