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Japan|「ユニクロ」の戦略3店舗の底力と年商2兆円死守の大号令

Jun 6, 2020.久米川一郎Tokyo, JP
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原宿駅前の複合施設「ウィズ原宿」にオープンした「ユニクロ原宿店」

6月に入って、開店を自粛していた新規店が次々とオープンしている。3月、4月、5月と完全に春物商戦がふっ飛んだ恰好になるが、まあなんとかオープンできたということで挽回を目論む各社だが、なかなか客足は戻ってこないというのが現実だ。

そうした中で、6月5日に開業した原宿駅前の複合施設「ウィズ原宿」の地下1階と1階にオープンした「ユニクロ原宿店」は真打ち登場という存在感を見せつけていた。JR原宿駅前というと、今年1月10日に「@コスメTOKYO」(以前はGAP原宿店)がオープンしたばかりだ。3月21日からはJR原宿駅の新駅舎が使われ始めるなど、俄然活気づいているのである。そこに登場したのがこの「ユニクロ原宿店」だ。

意外なことだが、ここしばらく原宿に「ユニクロ」の店は存在しなかった。「ユニクロ」は1998年に初の都心店として明治通り沿いに原宿店をオープンした。当時「ユニクロ」の名は徐々に知られ初めていたのだが、ただの安売りカジュアルショップとしか認知されていなかった。その知名度を決定的にしたのがこの原宿店だ。1998年当時の年商は831億円。その後の3年間で原宿店効果とフリース・フィーバーで年商は5倍の4185億円になった。その後、この原宿店は2007年にTシャツに特化した「UT」の店になったが、その「UT」も2012年に銀座中央通りの銀座旗艦店に移設された。

それ以降8年間、原宿は「ユニクロ」にとって空白区になってしまった。だから今回のオープンは8年ぶりの「原宿帰還」として注目されている。

「ユニクロ」を手がけるファーストリテイリングでは、今春オープンの横浜店、TOKYO店、原宿店を戦略3店舗と位置付けている。4月13日オープン(オープン後閉鎖されていたが、5月11日から時短営業、6月8日から通常営業)の「ユニクロ パーク 横浜ベイサイド店」は、「ユニクロ」と「GU」の複合店舗(4000㎡)で、公園一体型のファミリー志向のニュータイプ店だ。

6月19日にオープン予定の銀座マロニエゲートの1〜4階に移設拡大した4460㎡の巨大店舗でトップオブトップのグローバル旗艦店という位置付けである。店舗設計があのプラダ青山店の「ガラスの城」を設計した設計界の鬼才デュオ、ヘルツォーク&ド・ムーロンというのもいかに同店に力を注いでいるかがわかる。

そしてこの「ユニクロ原宿店」(2000㎡)であるが、若年層や海外観光客が多い店であることから、デジタル技術を駆使したスタイリング提案アプリ「スタイルヒント」と連動した売り場や「UT」をプッシュしている。こうした非常事態で生き残り戦略しか打ち出せない他の企業を尻目にして、未来を展望した戦略を3店できちんと打ち出せているファーストリテイリングという企業の凄さを改めて感じる。

さて、「ユニクロ」をメインブランドにするファーストリテイリングは、上半期決算(2019年9月1日〜2020年2月29日)を4月9日に発表した。それによると売上高1兆2085億円(前年比−4.7%)、営業利益1367億円(−20.9%)、税引前利益1508億円(−13.4%)、中間期純利益1034億円(−17.2%)だった。最大の海外市場である中国での新型コロナウイルス感染の影響を受けた減収減益決算だった。その後の国内「ユニクロ」の月次売上高を既存店ベース(既存店+Eコマース)で見ると、1月−1.0%→2月+0.8%→3月−27.8%→4月−56.5%→5月−18.1%という推移だった。地獄だった3月、4月を過ぎて、8月末に迎える本決算をどう見ているかというと、4月9日の中間決算発表時には、売上高2兆円(−8.8%)、営業利益1450億円(−43.7%)、税引前利益1450億円(−42.6%)、親会社の所有者に帰属する当期利益1000億円(−38.5%)と予想している。なんとしてでも、売り上げ2兆円、当期利益1000億円を死守したいという意志の感じられる業績目標だ。

最近の柳井正同社会長兼社長は、一時声高に言っていた「年商5兆円で世界一のSPA(アパレル製造小売業)になる」という目標を言わなくなっている。1949年2月7日生まれの柳井会長も71歳になって丸くなったと言われているが、常にその野望は持ち続けているはずだ。年商2兆8000億円で最近元気のないH&M社はすでに射程に入っているはずだが、年商3兆2000億円のナンバーワンSPA企業インディテックスとはまだだいぶ差がある。野望実現には当然M&Aがその鍵になるとは思うが、今回のコロナ・パンデミックでダメージが最も少なかったのは他ならぬファーストリテイリングなのだ。業績急回復の可能性を最も感じさせるのだ。そうした意味で、戦略3店舗の動向と8月末決算での2兆円の年商死守は今後のバロメーターになるような気がしている。

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