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驚異の回復をみせる米国に対して日本の復元は来年でも難しそう

Jun 4, 2021.三浦彰Tokyo, JP
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アメリカの新型コロナウイルス感染者の累計は6月2日の時点で3330万7008人、その死者の累計は59万5576人となっていて60万人を超えるのも時間の問題である。第一次世界大戦関連のアメリカ人の死者数は、11万7000人で、昨年6月あたりには新型コロナウイルスがこの死者数を超えたら「政治問題」であり、世界のパワーバランスが大きく変わるとまで言われていたが、あっという間にその水準を超えてしまった。次の指標は当然第二次世界大戦関連の死者数40万5399人ということになるが、これも今年の1月にあっさりと超えてしまった。1月20日の就任演説でバイデン大統領は「政治は脇に置いて、一つの国としてこのパンデミックに立ち向かわなければならない!!」と呼び掛けたが、すでにパンデミック対策の失敗はれっきとした政治問題であろう。前述の「世界のパワーバランスは大きく変わってしまう」という事はまさしく現実のものになりつつある。

しかし、現在の予防ワクチンの100人あたりの接種回数を見てみると、アメリカは、チリ97.73回、イギリス96.06回に次いで88.63回と高率(6月3日更新のOur World Dataによる)なのが注目される。アメリカという国は「やるときには一致団結して立ち上がる国」という感じがする高率の接種率である。ちなみに日本の100人あたりの接種回数は11.07回である。実にもたもたしている印象だ。ちなみに日本の6月2日時点での感染者は75万3274人、関連死者数は1万3274人である。アメリカの59万人に比べれば「さざ波」(高橋洋一内閣官房参与が日本の状況をそう表現して実質クビ)のようではある。

しかしである。最近のアメリカの小売業の数字(繊研新聞6月1日号/立野啓子通信員による記事参考)を見てみると「やるときはやる」アメリカの底力を強く感じてしまうのだ。

数字はアメリカ大手百貨店の第1四半期(2〜4月)の決算だ。

まずメーシーズは、前年比56.0%増の売上高47億600万ドル(5176億6000万円*)で経常利益は1億300万ドル(113億3000万円*、前年は赤字)だった。問題は売上高の前々年比だが、10.5%減だった。ECの売上高は前年比34%増で全売上高シェアは37%だ。

続いて、コールズは売上高は前年比60.1%増で38億8700万ドル(4275億7000万円*)、純利益1400万ドル(15億4000万円、前年は赤字)。売上高の前々年比は5%減。

ノードストロームは売上高は前年比42.0%増で29億2100万円(3213億1000万円*)、純損益は1億6600万ドル(182億6000万円)の赤字で前年に続く赤字だった。売上高の前々年比は19%減だった。

地方百貨店の雄であるディラードは売上高が前年比65.2%増の13億5800万ドル(1493億8000万円*)で、純利益は1億5800万ドル(173億8000万円*、前年は赤字)。売上高は前々年をクリアしているのが注目された。

純損益では、ノードストロームのみが未だに第1四半期で赤字で他の3社は黒字転換しており、第2四半期では売上高も前々年(2019年)を超えてくることが予想され、純利益も前々年の数字にほぼ戻ってくるのではないかと期待される。昨年はニーマンマーカス、J.C.ペニーといった有力百貨店がチャプターイレブン(連邦破産法第11条、日本における民事再生法にあたる)を申請するなど大殺界状態だった米国百貨店業界だったが、復活の光がすでに見えている。コロナ禍の収束が見えたことによる反動消費という見方もあるだろうが、「アメリカの底力」という感じもする。ワクチン接種100人あたり11.07回の日本がアメリカ並みの88.63回になっても、こうした反動消費の恩恵にあずかれるとはとても思えない。

アメリカ小売業の復活には4月21日に発表された10年ぶりの国勢調査で、2010年比で7.4%という1930年代の大恐慌以来の鈍化した増加ではあるものの、人口が増え続けていることを第一にあげたい。経済成長率(実質GDP成長率)もIMF(国際通貨基金)が発表した数字ではアメリカは1月発表の年率5.1%から年率6.4%へ上方修正されている。「アメリカの底力」はこうした数字に支えられている。これに対して、2016年からすでに人口の減少期に入り、IMFの経済成長率予測(4月修正値)では年率3.3%と主要国で最低水準の日本では、たとえコロナが収束期に入っても、2019年の水準に復元するのは、来年2022年中でも難しいというのが正直なところではないだろうか。1990年のバブル経済崩壊以来30年間勤労者の所得が増えていない国である。日本の長い坂道は続いていきそうだ。

1ドル=110円換算(6月3日時点)

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